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映画・演劇のレビュー

ゲキゲキ『短編作品集』A side

2024-08-25 06:25:00 | 演劇

ゲキゲキ2024夏公演のタイトルは実にシンプルに『短編作品集』とつけられている。AB2プログラムで3本ずつ。各80分という上演時間も適切。「7年間で創作してきた短編作品をコメディ中心に集めました」とチラシにはある。きっと自信を持って挑む公演なのだろうと思った。スケジュール的に少し厳しいと思ったけど、見せてもらうことにした。ウイングフィールドを使って小さな芝居を丁寧に見せるという姿勢を買う。そして、期待通りの小品集だった。うれしい。

 
短編だから簡単に作った、という安易な作品ではない。コメディ仕立てを逆手にとって、シュールな味付けを加味した。今回見たA sideの3本はちゃんと笑えるけど、それだけには終わらない微妙な後味を残す。作品の配列もいい。最初の『ダックスアンドドレイクス』は川のほとりでの水切り。なんと対岸まで石を飛ばしてしまった男とそれを目撃してしまったふたりの男女。バカバカしいお笑いを上手く収めて、ハッピーエンドに持ち込む。たわいないけど、絶妙な摑みだ。
 
続く『バカと天才』は30×30(火曜日のゲキジョウ)に参加した作品。だから(たぶん)少し長い。今回のメイン・ディッシュか。ミステリー仕立て。ホラーにもなる。心理検証実験の試験者として偶然集められた(はずの)4人の男女。たった1時間で10万円の手当。なんだか怪しい実験だと思うのだが、というところからスタートする。最初はタイトル通りバカな話だが、だんだん怖くなっていく。オチには無理があるけど、これは幻想的な話なのだ、として受け入れたらいい。
 
そしてラスト(『若気の至り』)はまたバカバカしい。白石幸雄(昔、寺田夢酔さんの劇団で男前を演じていた!)が、バカな3枚目を(冒頭のエピソードも同様)見事に演じた。中学の卒業式でバカをしたことを20年後に詫びる男の話。あり得ない内容だけど、だから楽しい。設定を生かしてキレのいい短編に仕立てた。
 
これらの作品がエンタメだけど(だから)安っぽい芝居にはならないのは、しっかりお話を練っているからだ。僕は決してエンタメが苦手だというわけではないけど、普段あまり見ない。だけどこういう作品なら大丈夫。さまざまな企画と作品にトライするゲキゲキの姿勢は好ましい。

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