習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

篠田節子『純愛小説』

2007-11-18 23:01:45 | その他
 読みながらそのあまりの痛ましさゆえ、目を背けたくなる。いい年した大人がこんなふうに恋をするなんて醜いと思う。だけれども、「大人だからこそ、隠せない想いがある。」という帯の言葉は、きっと正しいのだろう。大人になり、恋愛から降りてしまったはずの人たちが、恋に嵌ってしまって、取り返しのつかないことをしてしまう。そのことを否定も肯定もしない筆致は、かなり怖い。  タイトルの『純愛小説』という一見甘いネ . . . 本文を読む
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遊劇体『夜叉ヶ池』

2007-11-18 22:15:01 | 演劇
 絢爛豪華なスペクタクルとしての『夜叉ヶ池』ではなく、モノトーンで、静謐な世界。このとんでもなく単純な物語を、物語とすら言えないくらいにメリハリのないものとして、淡々と見せる。キタモトさんによる語りの部分は観客が芝居の世界にのめり込んでいこうとするのを拒絶するかのように、観客と舞台を分断する。きちんとした距離を取ってこの世界を外部から凝視することを強要する。恋愛ものとしてこれを読むことは出来る。し . . . 本文を読む
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トランスパンダ『ひとつでもいい』

2007-11-18 21:47:54 | 演劇
 これは、とても幸せなラブストーリーだ。でも、それって、これが甘いお話だ、ということではない。それどころか、これはいつもながらのとっても痛い話でもある。ここに居るのに、誰もいない。自分がひとりぼっちで、自分すら見えない。  ナカタアカネさんの作る世界は彼女自身にとてもよく似ている。自伝的なお話だから、なんていうことではない。だいたいそんなことは一観客には分からない。ただ、自分をここまで痛めつめな . . . 本文を読む
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