この脱力感は並ではない。ここまでどうでもいい話を、学芸会的ノリで90分間も見せ続けてしまうなんて、なかなか凡人に出来ることでない。普通ならもう少し内容のあるものを作ろうとか、テーマとかも、言い出しそうなところ。でないと情けなくてやってられなくなるはずなのだ。なのに、ミツルギさんは全くそんなこと気にしないし、別に興味ないみたいに、ひたすらただ動物達によるヨタ話を、誠実に見せていくことに終始する。
イノシシのチョビオ(上別府学)と、ブタのジュリエットン(宮脇玲香)がいかに出会い、恋をして、結ばれていくのか、そこにいかなる受難の歴史があったのかを、子供ですら考えないような「しょ-もないお話」(これ、褒めてます!)として見せていく。確信犯的にこういうおばかな話を作っている。
これが楽しいか、と言われたなら少し微妙なところもあるが、こんなにも真面目に、ここまでバカバカしいことを見せてくれる心意気には感動せざる得ない。暗転を多用して、まるで拙い高校生のクラス劇のノリで見せていく。イノブタくんが如何にして生まれるに至ったかを語るヨタ話を、思いつきのレベルで語って見せたこの芝居のへなちょこさは、これはこれで鮮やかだと思う。
前作『イノシシシ』で一つの方向を極めた後、こんなふうにバカをするなんて、あの北野武を彷彿させる。魔人ハンターミツルギさんは同じような事をしてるように見せかけて、その実、まるで別のアプローチを常に考えているようだ。何が出てくるかは見ないと分からない。今回のように見事、あきれさせられることもある。それもまた楽しい。
ps 「社会派ドラマとしてこの芝居を設定した」というミツルギさんからのコメントには、正直驚きました。震災ものとしての味付けは、実は気になっていたのですが、ここでは、無視して置きました。だってとてもそうは見えなかったからです。
私なりに震災物をやってみようと思って作りました。
が、説教くさいこととかメッセージ性とかを盛り込まないで作ったらこうなりました。
でも、これ本当に私が実感したことを面白いと思うように並べました。
うーん、私の感覚と皆さんの感覚がここまで大きく離れているとは思いませんでした。