■ なかなか頑張っている『妖精物語』 ■

私が経済ブログもどきを書く切っ掛けとなったのは、リーマンショックの直後、母親が保有していた毎月分配型投資ファンド『妖精物語』(GS)を売却しようか、それとも持ち続けた方が得か相談してきた事でした。
当時、リーマンショックの直後で円高が進行し、さらに債権価格が総崩れ状態でしたので、「損切」と判断して売らせました。
しかし、このファンド、意外のしぶとく、基準価格もその後持ち直して来ました。「あの時売らなければ・・・」と後悔する母親の愚痴に一念発起して、少し経済の事を勉強しようとブログの経済ネタを書き始めました。
『妖精物語』の月例報告書を見ると、基準価格なるものが乗っています。赤線が「基準価格」で、青線が「分配金込み基準価格」です。分配金とは、ファンドが投資して得た利益をファンドの保有者に分配するお金です。毎月お小遣い程度の分配金は老人には嬉しいのもですが、ファンドが儲かっていれば利益がから分配金が払われ、ファンドが儲かっていなければ元本を削って分配金が払われます。悲惨なファンドでは分配金の支払いが停止します。
『妖精物語』では、分配金込みの基準価格がリーマンショックで一旦減りますが、その後順調に伸びているので、このファンドに投資した方は「儲かった」と感じています。
一方、リーマンショック後の底値で売却した母は、今でもタマに恨み言を言います。
■ 低金利の環境下で金利収益を上げる為にリスクが拡大している ■
ゴールドマンサックス 毎月分配型投資ファンド 2011.12月末

ゴールドマンサックス 毎月分配型投資ファンド 2015.01月末

実は投資の世界で毎月分配型投資ファンド程、投資効率の低い商品は有りません。それは、投資利益を再投資せずにファンドの保有者に分配しているので、投資総額が増えず、当然投資収益が頭打ちになるからです。
この様にあまり儲からない「毎月分配型投資ファンド」ですが、お年寄り達が分配金が支払われる事で「儲かっている」と錯覚します。
さて、それではファンドの中身を見てみましょう。
投資ファンドのホームページには、上の図の様なポートフォーリオが掲載されています。そのファンドが何に投資しており、資産の内訳が凡そ分かる様になっています。
上の図は2011年12月末の『妖精物語』、下の図は最新の2015年1月末の資料です。
ここで注目すべきは「格付別比率」という円グラフです。
2011年12月は、AAA格が59.3%、BBB格は8.3%、平均格付けはAAでした。
2015年1月は、AAA格が36.2、BBBが28%、平均格付けはAA-となっています。
平均格付けだけ見ると、AAとAA-でひとランクしか違いませんが、その運用内容たるや、最早現在はゴミ箱の様になっています。
国債を始めとした債権市場は各国の緩和マネーの流入で金利が異常に低下しています。安全資産の国債で金利を稼ぐ事が難しくなっています。そこで、運用利益を確保する為には危険を承知で多少リスクの高い債権にも投資せざるを得ないのです。
■ ジャンク債のリスクはまともに金利に反映されていない ■
ジャンク債とはデフォルトの可能性の有る社債などです。本来はこの様な会社は高い金利で資金調達しなければなりません。しかし、緩和マネージャブジャブの債権市場は、少しでも高い金利を求めてジャンク債に資金がどんどん流入しました。
その結果、ジャンク債の金利が5%を切るなど、リスクに見合った金利が得られなくなっています。
ジャンク債市場はFRBの利上げで真先に崩壊が予測されている市場です。そんなジャンク債を28%も抱えたファンドが安全資産のハズが有りません。
このファンドの分配金程度ではリスクに見合わないのです。
これが『ハイイールド債(ジャンク債)ファンド』であれば買う方もある程度は覚悟します。その分、リターンが多いからです。しかし、老人達は「この投資ファンドは安全な各国国債や格付けのしっかりした社債で構成されているのでリスクはほとんど有りません。平均格付けもAA-ですから、日本国債よりも安全です」などと唆されて、この様なリスクの塊の様なファンドを買わされてしまうのです。
■ このファンドと親会社のゴールドマンサックスとの間で韓国ウォンのやり取りがあった ■
このファンドの最新のホームページに見慣れないお知らせが有りました。
「利害関係人との取引」に関する通知で、その内要は9/1にファンドの資金15,606 千米ドル分のウォンが親会社のGSに売られ、9/12日に28,916 千米ドル分のウォンが買い戻されています。
これは親会社であるゴールドマンサックスがこのファンドからウォンを調達して為替の売買を行った事を示唆していると思われます。
どうやら、日本の投資ファンドはアメリカの旧投資銀行のポケットの様な使われ方をしているのかも知れません。
まあ、上の取引報告からすると2倍近く儲かっている訳ですから、文句は言えませんが・・。
いずれにしても、金利が極限まで低下した状況は、ちょっとの金利を確保する為に過大なリスクを払わなければなりません。金融抑圧政策はこの様に、リスクと金利の正当なバランスを壊す事で、将来的リスクを積み上げて行くのでしょう。