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ババばかりのババ抜き・・・金融相場をカジノに例えると

2015-03-12 03:22:00 | 時事/金融危機
 

■ 変化した中央銀行制度 ■

昨日の記事で1929年の世界恐慌に際して、FRBを始めとした各国中央銀行が利上げで通貨価値を守ろうとした事を書きました。

当時の通貨システムは金本位制を基本としており、各国中央銀行は完全なる民営銀行でした。通貨の発行者は「紙の通貨」を発行するだけで金利収益を得られたので、中央銀行は紙切れから莫大な利益を得る事が可能でした。

当時の中央銀行制度は、銀行家達の最大の収入源であった訳で、その商品である所の通貨の価値を守る事が中央銀行の使命でした。ですから金本位制によって通貨が単なる紙切れで無い事を人々に信じさせる事が重要だったのです。

中央銀行が歴史的にインフレを嫌って来たのも、庶民の生活を守る事もさることながら、インフレは通貨価値の下落を意味するという側面も無視は出来ません。

現在の感覚で言えば、信用収縮が発生する金融恐慌の最中に中央銀行が利上げでマネタリーベースを絞るというのは信じられない政策ですが、当時としては銀行が次々と破綻する状況で「人々が通貨を紙切れだと気付く」事の方が問題だったのでしょう。

一方、現在の中央銀行の多くは政府との関係性が強化され、日銀の株式の53%は日本政府が保有しています。日銀の利益は国庫に納められているので、日銀の株主が日本円を発行する事で利益を得る様な事は有りません。FRBは現在でも完全なる民間の銀行ですが、利益の多くをアメリカの国庫に納めています。2014年、FRBは国庫に987億ドルを収めていますが、QEで取得した債権などの金利収益が利益の元となっている様です。

ニクソンショックで金兌換制が終了した事で、通貨の価値は経済の血液としての利便性によって支えられています。「通貨を沢山持っていた方が何かと有利」という経済のツールとしての価値が現代の通貨の価値を支えていると言っても過言では有りません。

■ マネーゲームのディーラーとしての中央銀行 ■

金融市場においては既に通貨はゲームのスコアーの様な物となっており、中央銀行はゲームの進行のディーラーの様な役割を担っています。ゲームがシラケテきたら通貨を大量に供給して参加者達の射幸心を刺激しているのです。

本来投資とは実体経済を反映させたものでした。資本家達は企業やビジネスに投資をして、中長期的にその発展から配当や株式売却益としての利益を得ていまいた。

しかし、株式市場が初期の目的から逸脱し、株式の売買によって利益を得る場所に変わりました。債権市場も「証券化」という発明によって債権自体が投資の対照となる様になりました。80年代の金融革命以降、金融市場は実体経済から独立して相場を形成する傾向が強まります。

マネーゲームの参加者たちは、ディーラーである中央銀行に金利を払ってゲームの資金を借り、中央銀行が管理する市場で遊ぶ博徒となったのです。この場合、ゲームを支配するのは中央銀行の決める金利です。金利が下がればゲームは盛り上がります。しかし、ゲームが過熱すると中央銀行が金利を引き上げてクールダウンするので、そのタイミングが勝負の仕掛け所となります。

ゲームの参加者は、中央銀行の視線や言動、さらには指先の些細な動きにまでピリピリと神経を尖らせます。

■ 失業率上昇という経済の好結果で売られる米国株 ■

米国株が値を下げていますが、その原因は米国景気の回復速度が速まった事(失業率の低下)。本来であれば市場に好感されるであろう材料ですが、FRBの利上げ観測が早まったとして株式市場は一気に売られました。

この事からも分かる様に、現在の市場は実体経済では無く、中央銀行の金利動向によって動かされています。そして、リーマンショック以降、短期金利はゼロに張り付いていましたから、それが少しでも上がれば市場は大きく反応します。

■ 手元には金利に低いジャンク・カードしか無い ■

何故、市場参加者がFRBの利上げにこれ程までに怯えるかと言えば、リーマンショック以降、ゲームの参加者建ちの冷え切ったアニマルスピリットを喚起する為に、FRBを始めとした中央銀行がタダでゲーム資金を提供していたからです。

始めは恐る恐るテーブルを囲んでいた人達も、タダの資金で金儲けができるとあれば盛り上がって来ます。気付ば、リーマンショック以前よりも多くのお金がテーブルの上の載っていました。

しかし、そろそろディーラーであるFRBがタダで資金を提供する事を止めると言い出しました。ゲームの参加者達はそろそろ利益を確定してテーブルを離れようと腰を浮かしはじめています。しかし、彼らは定職も無い博徒なので、ゲームを止めれば仕事は有りません。ギリギリまでゲームで粘って少しでも利益を拡大したい・・・。

しかし、ふと手元を見るとロクなカードが無い・・・。ジャンクだ・・・。

低金利で浮かれて安いカードに手を出し過ぎたのです。金利の低いカードは、金利が上昇し始めれば誰も見向きもしなくなります。どこかで手元のカードを現金化してテーブルを離れなければなりません。

しかし、今テーブルに残っている人達の手元には、どれも似た様な雑魚カードしか残っていません。ババばかりのカードでババ抜きをしている気持ちになってきます・・・。

参加者は皆、ディーラーであるFRBの表情を脂汗を滲ませながら凝視しています。

■ 隣のテーブルのディラーがタダの資金を配り始めた ■

気づけば先程から隣のテーブルが何やら騒がしい・・・。隣のテーブルのディーラーは日銀ですが、どうやら日銀はジャンジャンとタダの資金を配り始めた様です。ただ、隣のテーブルの花札は人気が無いのでゲーム自体は盛り上がっていません。とうとうディーラーとその子分のGPIFまでゲームに参加して捨て札を拾っては、盛り上げに必死です。

ところが、日銀のゲームの参加者は、FRBのテーブルに資金を貸し始めました。花札よりこちらのポーカーの方が儲かると見ているのでしょう。

どうもECBのテーブルも何やら騒がしい様です。あちらのテーブルは老人ばかりでバカラをプレーしていますが、ギリシャというカードが出てから皆及び腰になっています。盛り上がらないのでディラーがタダで資金を配り始めました。

ECBのテーブルからも資金を調達していうヤツが現れFRBのテーブルの緊張感は徐々に下がり始めました。

■ そろそろゲームを抜けたいのだけれど・・・ ■

新たな資金が供給され緊張感が和らいだ今がゲームを抜けるチャンスのはず・・・。だけど先程からFRBがじっと睨んでいます。せっかく盛り上がって来たのだから、水を差すなと言いたげな表情です。

他のヤツラも席を立ち難いのでしょう・・・。誰かが席を立たないかヒヤヒヤしながらも自分が率先して席を離れる勇気が無い様です。



こんなゲーム、続けるだけ損だとは分かっていながらも止められない・・・。これが金融相場というヤツなのか・・・。