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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

ヨーロッパへのエネルギー覇権競争・・・シリア・ウクライナ・ギリシャ

2015-01-07 08:09:00 | 時事/金融危機
 

前の記事のオマケ程度のラフな考察です。


■ ウクライナとギリシャ問題はパイプライン? ■

EUから見捨てられそうになっているギリシャですが、中露との繋がりが深まりつつあります。

シリア問題も、ウクライナ問題も、ギリシャ問題も、その根本的な原因として、ヨーロッパへの石油やガスのパイプラインの問題に行き付きます。

シリアやトルコは中東からヨーロッパに繋がるパイプラインの通過点として重要です。
ギリシャはロシアから南欧に伸びるサウス・ストリーム・パイプラインの中継点です。



さらにギリシャはイラン、イラク、シリアを経由してギリシャに伸びるイスラムパイプライオンの建設予定地です。シリアのアサド大統領はこの計画を2011年に承認していますが、シリアの内戦の原因はこのパイプラインに有るとも言われています。

イランの天然ガスはトルコを経由してヨーロッパに供給されていまたが、イラン制裁でトルコがこのパイプラインを閉鎖していました。しかし、イラン制裁が緩和されたので、現在このルートは復活していると思われます。

トルコはギリシャと歴史的に対立しており、トルコのEU加盟はギリシャが阻止していました。今回ギリシャがユーロから離脱しそうですが、中露にそそのかされてEUからもから離脱した場合、トルコがEUに加盟すいるハードルは大きく下がります。

現在のウクライナとギリシャで起きている事は、ヨーロッパへのエネルギー供給の覇権争いであると私は邪推しています。



原油価格下落が株価下落に波及する訳・・・ジャンク債バブルと自社株買い

2015-01-07 05:50:00 | 時事/金融危機
 

■ ジャンク債(ハイイールド債)とは? ■

かねてよりバブル化が指摘されていたジャンク債(ハイイールド債)市場の崩壊が現実化して来ました。

ジャンク債とは信用力の低い会社の社債の事で、デフォルトリスクもそれなりにあるので本来は高い金利を付けないと売れない債権でした。リーマンショック直後はジャンク債のデフォルト率は10%以上になっています。

しかし、リーマンショック後の世界的な金融緩和によって社債市場の金利も低下し、少しでも高い金利が取れるジャンク債市場に資金流入が起こります。

1) 緩和マネーが金利を求めてジャンク債市場に流入
2) ジャンク債の金利が5%以下に低下
3) 信用力の低い会社の資金調達が容易になる
4) 資金調達コストが下がったので問題企業が延命する
5) ジャンク債のデフォルト率が2%程度まで低下する
6) デフォルト率が下がった事で、ジャンク債市場にさらに資金が集まる
7) 7年間でジャンク債市場が2倍の規模の2兆ドルに拡大した

言い方を変えれば、ジャンク債市場は信用力の低い会社の延命装置の機能を果たしていたとも言えます。

■ ジャンク債市場で資金調達していたシェールガス開発会社 ■

アメリカのシェールガス革命においてジャンク債市場が果たした役割は絶大です。

1) シェールガス井戸は2年程で生産量が急減する
2) 次々に新しい井戸を開発しなければ採算が取れ無い
3) シェールガス各社はジャンク債市場で資金調達をし開発を加速した
4) シェール企業を含むエネルギー会社のジャンク債市場における比率は16%に達した
5) マスコミを使って「シェール革命」を過剰に宣伝して資金流入を促した

■ 原油価格下落で自転車操業が立ち行かなくなったシェールガス・オイル ■

ジャンク債市場で資金調達する事で新たな井戸を次々に開発してシェールオイルで採算を取るという自転車操業の図式は、昨今の原油価格の下落で完全に崩れました。

1) アメリカのガス価格はシェールガスの過剰供給によって暴落してしまった
2) シェール開発会社はシェールガス採掘前に採れるシェールオイルで利益を確保
3) シェールオイルの採算ラインは70ドル/バレルと言われている

4) 昨今の原油価格暴落により、原油価格は50ドル/バレルを割り込んでいる
5) シェール各社は採算割れに追い込まれた

シェールガスやシェールオイル、カナダのオイルサンド、深海海底油田など非従来型石油は生産コストが70ドル/バレルと高い為、原油価格が70ドル/バレル以上で無ければ採算が取れません。

石油が枯渇するという話はウソでは有りませんが、それは今では有りません。むしろ現在は需要が減少しているので石油は余っています。リーマンショック前やここ2~3年の1バレル90ドルを超える様な原油価格は、過剰流動性が流入して作り出したバブル相場で、需給関係による適正価格は40ドル/バレルと言われています。

昨日は原油価格(WIT)は50ドル/バレルを割り込んでいます。WITはテキサスで産出される硫黄分の少ない良質原油ですから、質の悪い原油の価格はさらに値下がりしているはずです。

■ 合成債権CBOとして流通するジャンク債 ■

ジャンク債市場の拡大に貢献したのがCBO(Collateralized Bond Obligatio)です。デフォルトリスクが比較的高いジャンク債ですが、いくつものジャンク債を一つの塊にすればリスクを分散できるとするのはリーマンショックの原因となったMBS(住宅担保証券)でも用いられた「大数の原理」によるもです。

ジャンク債は格付け順に「シニア債→メザニン債→ジュニア債」と分類されて売り出されます。この状態で、どの会社のどの様な社債がどの程度含まれているかは分からなくなるので、単純の金利がリスクとバランスしている金融商品と認識され流通します。

■ 「投資信託」などに組み込まれたCBO ■

リスクの高さから本来は流動性の低いジャンク債ですが、CBOに加工された事で様々な金融商品の再加工されています。

「ハイイールド債債権ファンド」などと言う名で金利の高さを売り物にして日本の銀行なども販売しています。

これはリーマンショックの原因となったサブプライム層の住宅ローンがMBOに加工され、さらにそれらがCDOと呼ばれる合成証券に加工されて流通した状況に良く似ています。

ただ、サブプライム層の住宅ローンの規模が1.3兆ドルに対して、エネルギー関連企業のジャンク債の規模は3000億ドルなので、その影響はサブプライム層のローンには及びません。

ただ、合成債権CBOの怖い所は、自分の保有するCBOにどの位シェール企業のジャンク債が含まれているか分からない所です。リーマンショックの反省から、リスクランクに応じたCBOの組成がされているとは言え、市場が疑心暗鬼に陥れば、CBO全体の信用が疑問視される事もあり得ます。

■ 米企業の業績を支える社債市場と自社株買い ■

ジャンクバブルが崩壊しても、それ自体の被害は深刻とは言えません。ジャンク債の金利が従来の適正金利に戻り、投資家達が多少の損失を被るだけです。投資家の中には金利に釣られて「ハイイールド債ファンド」を購入した方達も含まれます。

ただ、ジャンク債市場の金利上昇が、信用力のある社債市場にまで波及すると少々状況が変わってきます。アップルなどの優良企業は現在、極限まで低下した社債の金利を利用して、低コストで資金調達をし、その資金で自社株買いを行っています。

株式配当のコストを自社株買いによって圧縮すると共に、株価を上げて時価総額を吊り上げています。アメリカの優良企業の多くが社債市場で資金調達して自社株買いを行っています。

アメリカの実体経済の回復は遅々としたスピードですが、株価が上昇し続ける原因の一つには自社株買いの存在が有るのです。

■ 資源価格の下落はQE3の終了から始まっている ■

昨今の原油価格の下落の理由に、サウジアラビアなど産油国のシェールガス潰しがあると報道されています。しかし、サウジアラビアはアメリカの傀儡国家なので、この報道はブラフでしょう。

本当の目的はロシア経済に対する圧力にあると思われますが、ロシアは中国との貿易決済にドルの使用を中止するなど、ロシア制裁は中露のドル離れやBRIC's諸国の結束を強めつつあります。

そもそも、現在下落しているのは原油価格だけでなく、鉄鉱石や銅などほぼ全ての資源価格げ下落しています。この傾向はQE3の終了前から始まっています。

資源価格は緩和マネーが流入して高値が続いていました。ただ、資源価格は現実の需要という分かり易いベンチマークが有るので、世界経済が減速して実需が縮小すれば価格が下落に転じ易くなります。

QE3の終了は投資マネーの供給が確実に減る事を意味していますが、その影響を、実需低下の影響を受けていた現物市場が最大に被ったと言えます。そして、それに伴って資源国市場からの資金の引き上げが発生しました。

■ ヘッジファンドが損失の穴埋めに株を売る ■

昨年来、株価の動きが不安定になっていますが、現物市場で損失を発生させたヘッジファンドなどが株を売って損失を補てんしている為だと思われます。アップルなど優良株が値下がりしていますが、ヘッジファンドなどが買い上げていた銘柄です。

この様に資産市場の下落の影響は、株式市場にまで波及していますが、資産市場の価格は底に近付いているので、株式市場の混乱は一時的かも知れません。

ただ、社債市場の金利が上がれば、自社株買いのループに影響を与えるので、米株式市場の上値は重くなるでしょう。

■ FRBの金利正常化にはいくつものハードルが有る ■


現在の市場の混乱はQE3の終了のテール効果とも言えますが、今年予想されているFRBの金利正常化が始まれば、資金循環の歯車が一気に逆転する可能性も有ります。

FRBに変わる資金提供者として追加緩和に踏み切った日銀の存在は小さくは有りません。確かに日本からの海外投資が拡大していますが、その量はFRBの穴を埋めるには不十分と言えます。

そこで、ギリシャ危機がクローズアップされ、ECBを量的緩和に追い込もうとしてるのでは無いでしょうか・・・・。

ヨーロッパではデフレ化がほぼ確実になる一方で、ギリシャやウクライナへの融資が焦げ付こうとしています。東欧の銀行や、スペインの銀行の経営が怪しくなりつつあります。そろそろECBも量的緩和に踏み込まざるを得ない状況です。

いえ、ECBの量的緩和へのオネダリが、株式市場を混乱させているのかも知れません。