人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

ディズニーフレーバーのアメリカンヒーロー・・・『ベイマックス』

2015-01-04 04:49:00 | 映画
 




■ 雪だるまの話だと思っていた・・・ ■

ディズニーの新作アニメ映画『ベイマックス』
私はてっきり「雪だるま」の話だと思っていました。少年が作った雪だるまが、翌朝歩き出して、少年と冒険を繰り広げる・・・こんな話を勝手に想像していました。

ところが、我がブログのアニメ担当、「よたろう」さん情報では、グレンラガンだとか?!これはとにかく観に行って確かめるしか無い。

実はディズニーアニメを見るのは仕事の一環なのですが、良い年こいたオヤジが一人で観るのは気が引けます。以前は娘が大喜びで一緒に行ってくれたのですが、最近は友達と行きたいようで、付き合ってくれません。だから『カールじいさんと空飛ぶ家』以来、劇場でディズニーアニメは見ていません。『アナユキ』だって未見。(マズイ)

しかし『ベイマックス』は女子高生の琴線に触れないらしく、友達と見に行く約束はしていないと言う。そこで、正月3日、暇を持て余している娘を誘ったら二つ返事でOK。

どうせ見るならディズニーアニメの聖地?「イクスピアリ」で観たい。1時40分の吹き替え版に間に合う様に自転車でGO。時間がギリギリなので思い切り飛ばします。車道を時速25km/hオバーで疾走する父娘って・・・それも信号順守で停車時、右折時には手信号。交通ルールはしっかり教えないとね・・・。

■ エエーー、雪だるまじゃ無いの? ■

ここからネタバレご用心

ポスターの白いフワフワを雪ダルマと思い込んでいた私。雪ダルマがどう『グレンラガン』に結びつくのか意味不明でしがが、映画の冒頭は何故かロボットバトルで始まります。ロボットバトルと言っても手作りの小型ラジコンロボットを戦わせる賭けバトル。私達の世代なら『プラレス3四郎』、今の世代なら『ガンダム・ビルドファイターズ』と言った感じでしょうか。

違法の賭けバトルに現れた少年ヒロのロボットは初戦で直ぐにバラバラにされてしまいます。それでも、「お金なら未だ有る」と札束を取り出した少年に、敵はカモネギとばかりに再戦を承諾します。すると・・・・。

実はヒロは13才で高校を卒業した天才少年。兄のタダシと叔母の3人暮らし。ヒロはやりたい事が見つからずに、賭けバトルに興じていますが、そんな弟を見かねた兄が、彼の通う大学の研究室を紹介した事から、ヒロの人生の歯車が回り出します。

兄の研究室はロボット工学専攻。仲間は科学オタクばかりです。電磁サスペンションの非接触ホイールバイク、マイクロ・レーザービームカッター、タングステン・カーバイトを化学的に脆弱化させて見せる実験など、最先端の研究をする仲間たちは皆個性的です。

そして兄の研究は、メディカルケアロボットの開発。骨格はカーボンで出来ており、アームの吊り上げ荷重は400Kmと軽量でハイパワーながら、ナイロン製の風船で覆う事で、「思わず抱きしめたくなるロボット」のベイマックスを開発しています。

「痛い!!」という言葉で起動したベイマックスは、「ベイマックス、もう大丈夫だよ」と言われるまで、かいがいしく患者のケアーを続けます。

天才少年のヒロは、スムースに会話するインタラクティブシステムの開発の苦労を瞬時に理解し「コーディングには時間が掛かったでしょう」とツボを押さえた質問を兄に向けます。

■ 研究室に入る為に開発したマイクロボットが事件の引き金に ■

大学でロボット工学を勉強する事を目標としたヒロは、キャラハン教授に認められるべくロボットの試作に取りかかります。そして彼が完成させたのは、手の平に乗る小さなロボットの「マイクロボット」。この小さなセルは何千、何万個が集まって自在に形を変えてる事が出来ます。全体としては流体の様に挙動し、ミクロなストラクチャーの集積で全体を構成する事が可能です。そしてコントロールは脳のイメージを増幅したテレパシー。思い描いた通りに動かす事が可能です。

「マイクロボット」は展示会で注目を集めますが、その会場が火事になり、キャラハン教授とヒロの兄タカシは亡くなってしまいます。

傷心のヒロは部屋に引き籠り大学の入学通知もゴミ箱の中。ところが、兄の遺品のベイマックスが足をぶつけたヒロの「痛い」という言葉に反応して機動します。(このシーン、ベイマックスが狭い部屋の中で慎重に移動する様が最高にユーモラスです)

ベイマックスはプログラムに従ってヒロの心を癒そうとしますが、ヒロは彼を邪険に扱います。そんな折、最後に残っていたマイクロボットの小さなセルが突然カタカタと動き出します。あたかも何処かに行きたがっているかの様に・・・。それが気になるヒロに、「どこに行きたがっているか分かったらアナタは幸せになれますか?」と問うベイマックス。「ああ」と適当に答えたヒロですが、気付けばベイマックスは部屋に居ません。

あわてて後を追うヒロが行き付いた先は・・・・マイクロボットが量産される謎の倉庫。そして突如ヒロとベイマックスに襲い掛かるマスクの男とマイクロボット!!

ここからは怒涛の展開です。とにかく一気に盛り上がって行きます。

■ 前半はディズニーアニメで後半はマーベル映画 ■

前半のベイマックスとヒロの交流はディズニーアニメの真骨頂。トイストーリーやモンスターズインクの様なハートウォーミングでチャーミングな演出です。とにかくメディカル・ケアロボットとしての「決して人を傷付けない」キャラの魅力が最大限に引き出され、それが後半の伏線へとつながってゆきます。

後半の活劇はマーベルコミックスのアメコミシリーズそのものの演出ですが、実は原作はマーベルコミックスの『ビック・ヒーロ・シックス』なのだとか。



ディズニーは2009年にマーベル社を買収しますが、監督のドン・ホールがディズニー向けになるマーベルの作品をデータベースから探していて、ほとんどヒットせずに忘れ去られていた同作を見つけた様です。原作は日本を舞台にして、6人の日本人がロボットと一緒に悪と戦う物語でした。それをディズニー用にアレンジさいたのが『ベイマックス』。舞台もサンフランシスコを模した街に変更されていますが、随所に日本的?アイコンが散りばめられた、いかにもアメコミに出て来る様な「いい加減な日本風景」をあえて作り出して雰囲気を盛り上げます。

■ 全編に日本の特撮やアニメ、そしてアメコミへのオマージュが散りばめられている ■

全編に日本の特撮やアニメや、そしてアメコミへのオマージュが散りばめられているのも見どころです。



上の映像は、ベイマックスにヒロが装着した強化プロテクター。何だかあまり強そうに見えませんが、それもそのはず。これ、『キック・アス』のトホホなヒーローのパロディーだと思います。



ところが、バージョンアップした姿は・・・これってシャーザク!?



緑から赤に変わると性能3倍どころでは有りません。

その他にも、ベイマックスがガラス張りのビルを背景に飛翔するシーンなど、ガンダムでコロニーを背景にしたシーンで何度も見た様な・・・。

ヒロとベイマックスが風力発電のアドバルーンの上で空を見るシーンの空気感も、日本のアニメのそれに近い感覚です。

さらに極め付けは「ロケットパンチ」!!

■ スタン・リーのカメオには爆笑 ■

エンディングタイトルの後の短い映像。富豪の息子フレッドが両親の肖像画の後ろに隠された父親の隠し部屋の存在に気付くシーン。

何と、オリジナル音声では、父親役の声はスタン・リーが当てているそうです。スタン・リーと言えば『スパイダーマン』や『Xメン』や『アイアンマン』と言ったマーベルの原作者にして、アメコミ界の大御所じゃないですか。

日本のアメコミアニメ『HEROMAN』の原作もスタンリーでした。(これ傑作です)




彼、実写作品にはチョコチョコとカメオ出演している様ですが、まさか声のカメオとは。
そう思いきや・・・・肖像画を良く見て下さいね・・・。




■ アメリカの3Dアニメは凄いレベルに達してしまった ■

ピクサーなどが開拓した3Dアニメの世界ですが、ディズニーもセル絵のアニメに戻る気は無い様です。

『カール爺さん空飛ぶ家』の頃は、CGに未だ違和感が有りましたが、既に今作ではCGでの表情の演出などはセルアニメを完全に凌いでいます。むしろ表情が動き過ぎてウザイ感じすらします。

ディズニーはセル画の時代から表情が良く動きますが、欧米人の会話は眉を始めとした顔の表情や手のゼスチャーが言葉同様に雄弁に語ります。ここら辺が日本の口パクアニメとの最大の違いかと思います。

とにかく『サンダーバード』の時代から欧米人は「とことん作り込む」のが正義だと考える人種です。CGで世界構築するにしても一切の手抜きましません。逆に日本の文化は「省略の文化」ですから、動きでも表情でも削れる物はそぎ落として行きます。(当然予算も有りますが)

一方、CGで人間を表現すると些細な差異が気になって「気持ち悪さ」を感じる事が有ります。そこでディズニーは人の動きでは無く、「アニメの動き」を再現する事で「リアルの不自然さ」と解消しようと試みている様です。は人形劇の動きに似ています。


■ 描く事には拘るが、伝えたい事を既に失った日米アニメ ■

技術的にはアメリカの3Dアニメも、日本の2Dアニメも到達点に達しつつある様に感じます。その一方で、コンテンツの中身はマンネリ化しています。

日本のアニメは近年、過激な表現が目立ちますが、作品の中身というか「伝えたい事」が無くなった反動で、表面的な演出ばかりが進化している様です。同様にハリウッド映画もアメリカのアニメ映画も、CGの導入など技術的進化は目を見張るものがありますが、中身は日本同様にカラッポです。

『ベイマックス』もエンタテーメント作品としてはハートウォーミングかつエキサイティングで傑作と言えますが、人の心にトラウマを植え付ける様な物は慎重に排除されている様に感じます。

日本でも、アメリカでも以前は社会運動から映像業界に流れ込んた監督や俳優が少なからず居たので、彼らは作品の中に自分達の主張を時に色濃く、時にこっそりと反映させて来ました。富野や宮崎がその世代に当たります。

一方、現在の作家達の目的は「素晴らしい映像作家になる事」であって、メッセージは販促用の薄っぺらな物と化してします。

情報化社会が進めば進む程、現実社会がバーチャル化して人々から現実感が薄れて来ている事の現れかも知れませんが、技術的、或いは演出的に素晴らし作品に触れれば触れる程、「表現対象の不在」を強く感じてしまいます。


正月休み、『無限のリヴァイアス』を見直しながら、この時代が日本のアニメの頂点では無かったかななどと漠然と考えてしまいます。



不満が全く無い訳では有りませんが、『ベイマックス』は高3の娘曰く 「アナユキの1000倍は面白い」 アニメです。

春休みにお子さんとご覧になるには最高の作品である事は私が保障します!!


ベイマックスのスマホケースが欲しく成りましたが、あいにくiPhone6用しか有りませんでした。アメリカ人の陰謀をそこはかと無く感じてしまいました・・・。