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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

日本には本当のロックが無いとお嘆きの貴兄に・・・「ナンバーガール」という奇跡

2012-01-21 05:10:00 | 音楽
 



■ 日本語ロックが世界の頂点を極めた瞬間 ■

ダサいシャツにチノパン。
眼鏡を掛けたどこにでも居そうな男がステージに上がる。
ぶっきりぼうに喋り、
そして演奏が始まる。

その瞬間に、世界は反転するのだ。
日本語ロックこそが、今世界の頂点にあるのだと。

「ナンバーガール」はボーカルでギターの向井秀徳が始めたバンドだ。
向井は子供の頃から兄の洋楽のCDを聴いて育った。
ピクシーズやソニックユースを聞いて育った青年は、
やがて故郷の福岡でバンドを組んだ。

ベースの中尾憲太郎と向井の二人が目に留めたギタリストは
田渕ひさ子という女性だった。
選ばれた理由は、「ギターを弾くたたずまいが端正だから」。
別のバンドから誘ったドラムスのアヒト・イワサワを加えて
「Number Girl」が結成された。

■ 福岡の地から革命が始まった ■

「Number Girl」は徹底した体育会系バンドである。
贅肉を削ぎ落した、タイトでスピード感溢れるリズムの上で、
掻き鳴らされる軋んだギターに、向井の日本語が突き刺さる。

真剣での立ち会いの緊張感にも通ずる様な彼らの音楽は
「ロックを真似た何か」とは対極にある、
「ロックの本質」にダイレクトにコミットする行為に他ならない。

向井口から放たれる日本語は、
あくまでも日本語として聴衆の耳に突き刺さる。
「坂口安吾」を愛する彼の詩は、
鋭くササくれ立ち、硬質でありながら、
その実、軽々しく闊歩する少女たちを軟弱に称賛する。

社会の虚実に怒りをぶつける訳でも無く、
青春の心の葛藤に執着する訳でも無く、
向井はひたすら、現代日本で最強の存在である少女達を称賛する。

清らしく、汚れてはてて、そして無邪気で、冷酷な少女達。
在る時は、舞い踊るサクラの花びらの様に軽やかに、
在る時は、吹きすさぶ疾風のごとき彼女達。

疲れ果て、荒廃した日本の大地に、
最後まで立ち続けるのが、彼女達である事を向井は予感しているのだ。

「Number Girl]においてロックの歴史は反転する。
日本語ロックこそが、世界最強であると。
日本の制服姿の少女達こそが、世界最強であると。

■ メージャーと契約はしたものの ■



「Number Girl」を福岡から連れ出したのは東芝EMIである。
当時、「椎名林檎」を売り出した東芝EMIには、
オルタナ系ロックの優れたプロデューサーが居たようだ。
「椎名林檎」がメジャーデビューした事も奇跡に近いが、
「Number Girl」に関してはそれ以上の奇跡だ。

私が始めて手にした彼らのアルバムも、
メジャーデビュー版の『School Girl Distortional Addict』だった。
制服の少女が機関銃を担いでいる下手くそなジャケット。
これには勝てない。

期待いっぱいにCDを再生するとスピーカーからは歪んだ酷い轟音。
歌詞は聞き取れず、楽器の音も不鮮明。
これがメジャー・レーベルのCDなのか?
インディーでもこんなひどい録音は無い。

これが「Number Girl」の最初の感想だ。
ただ・・・スピーカーから放出される熱い音の塊はハンパでは無い。


「Number Girl」はメジャーデビューに当たり
東京のスタジオで録音したテイクを拒否している。
「これは自分達の音では無い」と・・・。
そして、福岡のスタジオで録音されたのが
『School Girl Distortional Addict』である。
そこにはライブハウスの熱気が詰まっていた。

しかし、メジャーが良くもこんな録音のCDを発売したものだ。
当時の東芝EMIのプロデューサーの英断に頭が下がる。

■ 音は良くなったけれど、何かを失った ■



デイヴ・フリッドマンをプロデュースに迎えメジャー2ndアルバムでは
録音はクリアーで重厚だ。
ベールを何枚も剥がしながら、演奏の熱気を伝えている。

しかし、何かが失われてしまった・・・。
それは、若さ故の無邪気さだろうか、それとも勢いだろうか。
名プロデューサーを迎えた気負いが、音楽のエネルギーを削いだのか・・。

http://www.dailymotion.com/video/x9smbh_number-girl-zegen-vs-undercover-liv_music

■ アメリカ上陸 ■

[[youtube:3h-7MTKNNTY]]

この時代、アルバム録音の為に訪れたアメリカで
彼らはライブを行っている。
堂々と日本語で歌う向井に
アメリカの聴衆は何の違和感も無く拍手を送る。
彼らの音が本物だからだ。
彼らはあくまでもライブバンドなのだ。

向井の興味深いインタビューがある。
彼らはストイックに音楽を追求し続ける。



■ 世紀の名盤 『NUM-HEAVYMETALLIC』 ■



ストイックに音楽と対峙する彼らは、
デイブ・フリードマンとの作業や、
アメリカツアーを経て、大きな進化を遂げる。

初期の衝動を叩きつける楽曲から、
複雑なリズムや、構成を持った曲にチャレンジを始めたのだ。
そしてその試みが、名盤『NUM-HEAVYMETALLIC』を生んだ。
ここには、日本どころか、当時の世界で最高峰のROCKが記録されている。

■ 絶頂をもって解散 ■

『NUM-HEAVYMETALLIC』を発表して一年も絶たずに、
彼らは突如解散を発表します。

ベースの中尾が別のバンドに加わる事で脱退し、
中尾を欠いたバンドはNumber Girlでは無いと向井が判断したからです。
Number Girlの歴史は、バンドの絶頂期に突然に途切れました。

彼らの解散公演の音源がCDとして発売されています。
その演奏は、10年経った現在でも、孤高の存在です。

現在、彼らのライブ音源が数々発売されています。
彼らに憧れてバンドを始めた世代がデビューしています。
しかし、未だにNumber Birlは、日本語ロックの孤高の到達点であり続けます。

多くのアーティストが彼らをリスペクトしています。
この人などは、福岡時代からの大ファンで、
田渕ひさ子とはレコーディングもしているお友達です。



そして、同じ番組での向井のソロをどうぞ。



昔はこの対談の後に椎名林檎と向井のセッションがアップされていたのですが
消されてしまった様なので、ZAZEN BOYS のライブの二人の共演をどうぞ。

[[youtube:Dbekd8F-QqQ]]

こんな素直な林檎ちゃんも滅多に見れません。

そして、こちらは「発育ステータス」で田淵ひさ子と共演する林檎ちゃん。
「絶頂集」で聴くとイマイチですが、
この映像は最高ですね。
「絶頂集」は椎名林檎の最高傑作ですが、
バンドの音はCDには収まり切れません。
やはり。ライブで見ないといけないのでしょう。



そしてこちらは小谷美佐子と共演する田淵ひさ子。
共演はイースタンユースと100Sのメンバーですね。
田淵ひさ子と向井が小谷美佐子のファンという事で実現した共演でしょう。



そして、最後はこんな微笑ましい映像をどうぞ。