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EUにみる「統一」・・・TPPの向かう先

2011-11-07 07:51:00 | 時事/金融危機
 



■ 自由貿易の見本はEUにある ■

野田首相が10日にTPPの協議への参加を正式に国民に発表する様です。

世間ではTPPに関する様々な論議が盛り上がっていますが、
それら国民の声など存在しないかの様に、
TPP参加に向けての動きが進行しています。

国民にとっては突然降って湧いた様なTPPですが、
世界の潮流は以前より、2国間、多国間の自由貿易にシフトしています。

EUなどは通貨や外交政策まで統合し、
自由貿易のさらに先に進んでいます。

EU加盟国は共通通貨を使い、関税は撤廃され、
労働市場は自由化し、様々な法令や政策も調整が成されています。

さて、それではEUにとって「自由化」はメリットでしょうか、
それとも「デメリット」だったでしょうか?

■ 移民対策としてのEU ■

EU発足以前の先進ヨーロッパは、ある問題を抱えていました。
それは「移民問題」です。

第二次世界大戦以降、ヨーロッパ経済が復興する過程で
不足した労働力は旧植民地からの「移民」で賄われました。
確かに移民は安い労働力でしたが、
ヨーロッパにおける移民は、同化する事無く、
貧困という社会不安を作り出しました。

一方でヨーロッパは現在日本が体験している少子高齢化を
一足先に経験しています。
少子高齢化の問題は、労働力の不足という側面と、
消費減退という側面を持っています。

ヨーロッパの国々では移民政策で労働力不足をしのぎましたが、
その後に発生する消費の減退で、今度は労働力が余り出します。

移民達は失業し、貧困化する一方で、
自国の若者達も、移民に職を奪われたと言って移民を敵視しました。

日本が現状の社会システムを維持出来たとして、
その先にあるのは、当時のヨーロッパの様な「年老いた国」です。

■ 冷戦終結という転機 ■

冷戦終結はヨーロッパにとって大きな転機となります。
旧東側諸国は、西側ヨーロッパに労働力と市場を提供したのです。

西ドイツは東西統一で、一時は成長が鈍化しましたが、
統一ドイツはその後、目覚ましい復活を遂げています。
旧東ドイツは安い労働力を提供する事で、
ドイツの工業製品の競争力は格段に高まりました。

移民と異なり、同じキリスト教圏の人々は、
社会には受け入れ易い存在です。

■ EUという「合理化」 ■

その後のヨーロッパはEUという形でさらにこの動きを加速させます。

ドイツの優れた技術と資本は、後進ヨーロッパを利用する事で、
その生産性を高めて行きました。

同様に農業先進国であるフランスやオランダは、
関税と食品関係の規制緩和の波に乗ってEU域内での輸出を拡大します。

一方後進ヨーロッパは先進国からの投資によって、
所得レベルが向上し、さらには不動産価格も上昇しました。

リーマンショック以前のEUでは、
「自由化」のメリットが最大限に発揮されていたのです。
そのメリットとは「国際分業」でした。

■ 犠牲になったのは移民達 ■

その一方で犠牲になった者達も居ます。
それは移民達です。

大戦後、ヨーロッパ経済を影から支えていた移民達は、
後進ヨーロッパの安い労働力に負ける形で職を失います。
階層社会のヨーロッパでは移民が成功するには、
サッカー選手になるくらいしか方法が無くなります。

EU諸国は、「移民」という「遺物」を体内に残したまま、
EU統合という、さらなるステップに進もうとしています。

■ ユーロ危機は「統一不足」 ■

リーマンショック以降顕在化した「ユーロ危機」は、
ユーロ発足時からその危険性は指摘されていました。

EUは自由貿易と労働市場の自由化で、
経済的には、一つの巨大な国になりました。

そのメリットを最も享受したのがドイツです。
EUの成果としてのドイツの貿易黒字は、
ドイツ国民だけが享受してしまいました。

ドイツの市場となる国々では、当然貿易赤字が膨みます。
しかしこれらの国々もユーロという強力の通貨を持っていたので、
ユーロの信用に裏打ちされて、国債を発行する事が出来ました。
金利も高いので、ヨーロッパ諸国の資金で国債は消化されて行きました。

これは先進ヨーロッパから後進ヨーロッパの資金移転ですから、
このシステムが回転している間は問題は発生しませんでした。

しかし、リーマンショックによって投資の引き揚げが一気に発生すると、
後進ヨーロッパ諸国の経済は一気に悪化し、
国債金利が跳ね上がりました。

EUの財政が統合されていれば、
ドイツの税収が、PIGSに分配されているので、
ギシシャの財政赤字もこんなには大きくなっていなかったでしょう。

要は、「ユーロ危機」は統一通貨を持ちながら、
統一の財源や財政を持たないユーロの当然に帰結と言えます。
「統一が不足」しているのです。

「ユーロ」は「さらなる統合」無くしては、崩壊します。
そして、EUはさらなる統合に踏み出すでしょう。

■ TPPでアメリカは脱中国を目指す ■

TPPがアメリカにメリットだけをもたらす訳ではありません。

製造業の衰退したアメリカにおいては、
移民達は、将来的には財政の負担でしかありあません。
アメリカの製造業は既に生産拠点を中国やその他の国に移しています。

アメリカは人口が増加していますが、
増える人口の源は、貧乏ば移民達です。
今後、アメリカでは移民を中心に貧困が拡大生産され、
財政的負担と社会不安の要素となって行きます。

現在でもアメリカは、社会階層によって居住地域が異なります。
街の中心部周辺には車も持たない様な貧困層が住み、
富裕層は郊外の庭付きプール付住宅に住んでいます。

今後この格差はさらに拡大してゆきます。
この事は、グローバル化の弊害は
アメリカにも同様に訪れる事を示しています。
(既に訪れたと言った方が正しいでしょう)

アメリカは貿易収支や財政収支の観点からは
既に国家として破綻していますが、
「ドル」という最大の輸出品でどうにか凌いでいます。
しかし、ドルの価値も暴落しています。

■ TPPで中国を牽制するアメリカ ■

アメリカはTPPでアメリカ国内の製造業の復活は望んでいないでしょう。
むしろ、国際分業を促進する中で、
中国への依存度を下げたというのがその目的に様に思えます。

世界が統一を目指すにしても、いきり世界政府樹立とはならないでしょう。
必ず、経済・政治ブロックを形成します。

現在世界の経済発展の中心地はアジアです。
アメリカが経済ブロックを造る時、
北米と中南米だけでブロックを作ると、
アジアブロックに負けてしまいます。

そこで、日本や韓国など先進工業国を含めた経済ブロックを目指すはずです。
韓国とはFTAで、
カナダとメキシコとはNAFTAを締結しています。
ここにTPPの各国が加われば、世界最大の経済ブロックが出現します。

資源も食料も、技術も生産設備も、労働力も市場も全て揃った
巨大な環太平洋経済ブロックが出来るなら、
そのブロック内で閉塞的な経済活動も可能になります。

これは中国に対抗する経済ブロックです。

■ 中国かアメリカかの二者択一 ■

野田総理のTPP参加に対する独断専行は、
アメリカの焦りの裏返しの様に見えます。

アメリカは財政破綻が決定的になる前に、
どうにかTPPを締結したいのでは無いか?

2012年末まで世界経済が崩壊しないでいられる保証はありません。
わざと崩壊し仕掛けて、新しい枠組みを作るというのは
常套手段とも言えます。

その時日本に迫られるのは、「誰と組む」のかという問題です。
当然、中国か、アメリカという選択になります。

TPPとはその選択なのかも知れません。

■ 気になるアメロ ■

ここに来て「アメロ」の噂が出ています。
1012年12月にアメロが発行されるとか、しないとか・・。

もしドルが崩壊するならば、
その時は世界中の全てのペーパーマネーの信用が失われる時です。
円や豪ドル、NZドルとて例外ではありません。

その様な状況が訪れた時、世界はどうするでしょうか?
経済活動を維持する為には通貨は不可欠です。
しかし、最早1つの国では通貨の信用は得られません。

資源・食料・技術・生産設備・労働力・市場が
ある程度の規模で揃っている国家集団があれば、
それらの国々の全体の信用において通貨を発行出来るかも知れません。

経済ブロックへの加盟条件は通貨の共通化。

「アメロ」に関しては正に「狼少年」的ですが、
もし「アメロ」が発行されるとするならば、
それはアメリカ・カナダ・メキシコの共通通貨などでは無く、
NAFTAとTPP諸国の共通通貨となるのかも知れません。

環太平洋経済ブロックの域内は「アメロ」を統一通貨とし、
域外とはIMFのSDRの様な通貨でやり取りする事は、
基軸通貨国が利益を独占する事も無く、
合理的な方法です。

日米は米国債を介して既にお札の裏表の様な状態です。
アジアにはドルペックに近い政策を取っている国もあります。
環太平洋の通貨統合は、意外とハードルが低いかも知れません。

平時にこんな話をしても、「何言ってるの?」と思われますが、
世界経済が大混乱を起こしていれば「寄らば大樹の陰」とばかりに
環太平洋貿易ブロックは一気にEU型の統合に進展するかも知れません。


■ 財源は「消費税」? ■

問題はユーロの躓きでも明らかなように、
共通の財源と財政政策無くしては、
統一通貨は成り立たないという事。

財源としては経済活動の大きさに比例して
自動的に徴収出来る消費税が好ましく、
・・・まさか消費税10%の公約は、この布石でしょうか?
確かに10%はアメリカの税率に近い様な・・・。

ところで、アメリカの財政は今後さらなる悪化が予想されます。
その財政の穴埋めをするのは、やはり日本と言う事になるのでしょうか?
現在でも米国債購入で日本が支えているとは言え、
制度化されるとなると・・・・。
ドイツ国民の怒りも理解できます。


本日は「陰謀論」的にTPPの目的を邪推してみました。