人力でGO

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原油価格は高騰しているのか?

2009-10-16 10:35:00 | 時事/金融危機



■ 原油1バレル78ドル ■

原油価格が1バレル78ドルになりました。
さあ、大変だ、又ガソリン価格が高騰したらどうしよう・・・。
誰もがそう考え、家計を心配します。

でも、心配ご無用です。
昨年の原油高騰時の最高値が1バレル147ドルでした。
1ドル105円でしたから、15,435円になります。

これが現在の為替レート90円だと
1バレル78ドルは、7020円です。
実際に、国内のガソリン価格が下落基調です。
ここの所の投機的な原油の高騰で、今後は緩やかな上昇に転じますが
パニックを起す程の値上がりは無いはずです。


■ 本来の適正価格は? ■

世界的不況で、原油の需要は落ち込んでいます。
本来の原油の適正価格は、1バレル40ドル程度でしょう。
ただし、ドルが15%程度105円時代から減価しているので、
現在の適正価格は1バレル45ドルを越えるくらいでしょう。

78ドルというのは、いささか高い様です。
FRBがせっせとばら撒いたドルが行き場を失い、
原油相場に流れ込んで、原油価格を押し上げている事は明確です。

■ 困るのはアメリカ人 ■

日本人も相場の上昇分は、原油価格が値上がりしますから、
ガソリン価格も若干値上がりするでしょう。
しかし、為替が円高なので、価格転嫁は少なくてすみます。

しかし、アメリカ人は「弱いドル」から逃れる事が出来ません。
40ドルが78ドルですからほぼ2倍です。
アメリカ人にとって原油価格は、まともに2倍になっているのです。

■ インフレ圧力ともなる原油高騰 ■

原油はあらゆる産業の基本を成しています。
原油価格が上昇すれば、あらゆる製品やサービスが値上げ圧力を受けます。
これは、米経済としてはインフレ圧力として働きます。

現状、FRBはドルがドルを大量にばら撒けるのは、
インフレ圧力が低いからです。
アメリカが一番心配しているのは、
インフレによってドルの価値が暴落する事です。

ですから、インフル圧力が高まれば、
FRBは利上げを検討せざるを得なくなります。
実態経済は瀕死の状態です。
また、金融機関もほとんど0金利で供給される豊富なドルで利ザヤを稼いで生き延びています。

■ 安全な出口などない ■

「出口戦略」などと格好を付けた言葉で誤魔化していますが、
安全な出口などないのです。
FRBが金利を上げざるを得ない時は、
インフレという圧力鍋の内圧が不本意ながら、高まった時です。

「出口」ではなく「非常バルブ」としての利上げが発動されます。
当然、長期国債の金利もつられて上昇し、
アメリカの借金が返済不能になるリスクが高まります。
(既に、返済不能ですが・・・。)

さて、この様な「非常口」の様な「出口戦略」を世界はどう判断するでしょう?
アメリカの格付会社は、そのような状態でも米国債の格付けを「最高」とするのでしょうか?

安全な出口など、どこにもないのです。


■ インフレよりも怖いスタグフレーション ■

出口戦略でアメリカが描いているのは、
コントロール可能な緩やかなインフレの進行です。
これは、経済成長と同義とも言えます。

しかし、尤も恐るべきは、経済成長を伴わないインフレの進行です。
これは不況とインフレの同時進行で、スタグフレーションと言われます。

日本のデフレは明らかに経済の縮小ですが、
物価が下がっているので、国民は贅沢さえしなければ
生活レベルが極端に定価する事はありません。
いろいろ、不満は溜まりますが、まあ、どうにか生きていけます。

しかし、スタグフレーションの状況下では、
雇用破壊や所得の低下に、物価上昇が追い討ちを欠けます。
輸入大国アメリカで、ドルの為替相場が下落するという事は、
輸入価格の高騰を意味します。
・・・そう、スタグフレーションに陥るのです。

この状況に、アメリカ国民はいつまで耐えられるでしょうか?
アメリカ国民はいつまでオバマを支持し続けられるでしょうか?