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『あざみの歌』は まだ歌えますか

泣いて、笑って、歌って介護!!そんな日常の過去の記録と
新たに今一度自らを見つめてぼちぼちと戯言なりを綴ります。

かぁちゃんの今(その一)

2011年03月09日 04時49分23秒 | かぁちゃんにまつわる話
きょとんとしている。
「どないしたん?」と聞くと、ちらりと私を見た後に何かをじっと見つめている。
かぁちゃんの最近の得意な表情を例えるとそんな感じ。

もう随分前から、かぁちゃんはもう“あざみの歌”は歌えない。
でも、歌う私の口元をじっと見つめて、握った右手をぽんぽんと小さく動かす事はできる。
右手ぽんぽんがかぁちゃんの歌声になった。

かぁちゃんの右手はなかなか優秀である。
何と言っても箸がまだ持てる。
ちゃんとつまんだ物を口に運べる。
時々途中で落っことし、それをじっと見つめた後で、悲しそうな顔で私の方を見る。
ベッドに横にすると、しばらく右手を宙に浮かせてじ~っと見つめて・・・ぱくりと袖に噛み付く。
かぁちゃんの動作が機敏になる唯一の時だ。
箸もスプーンも持たせなければ持てないのに、ぱくりとやる事だけは積極的だ。

時々ダンスを踊るように指先をつぼめてくるりくるりと空に円を描く。
ご機嫌麗しい時の優雅な動きである。


近頃頻にとろりとろりと眠ってしまう事が多くなった。
時には大好きな食事の時ににも箸を持ったまま頭をお皿に突っ込みそうになっている。
けれど指から箸を外そうとすると、ぱちっと目を開け力を込めて抵抗する。

両の手で支えるとしっかり立ち、そのまま引っ張るとちゃぁんと歩く。
私が片手を空けなければならない時、左手で腰の辺りを抱えると
かぁちゃんはがしっと私に摑まり頭を肩に乗っけてくる。
時にはそのまま私の背中を右手ですりすりしている。
そうして、成り行きで頭をなでなですると、安心したように目を閉じる。


おい・・・立ったまま寝るなぁ・・・


けれど音には敏感で、音楽をかけるとそちらの方をじっと見つめている。
特に背の君の声には敏感で、声が聞こえると分かった風にきょとんと背の君の顔を見る。
そうそう、変化があったのは彼の方で、
かぁちゃんが“お食事処ぽれぽれ”に来るようになってから
何かにつけて、かぁちゃんに話しかけている。話しかけて・・・?
違う!以前のかぁちゃんなら必ず言いそうな事を声色を真似て一人で会話をしている。


あんさん・・・そりゃ一人漫才やないかいな・・・



夕食のひととき、そんな風な穏やかな時が流れる。
数年前には想像出来なかった、柔らかな時が流れているかぁちゃんの今。

そうしてそれは私の今。










もちろん・・・大洪水や大ウン動会でない時に限るのではあるが・・・


何より・・・かぁちゃんが喋らないと・・・・・・・・・・平和だ・・・


・・・いや、ほんまに・・・

もうね、以前のかぁちゃんの毎日のお喋りにどんなけ振り回され心乱されていたかって知らんでしょ?
せやから、何を罰当たりな事をと思うでしょ?酷い娘だと思うでしょ?
自分でもそう言いながら「悪いやっちゃなぁ。」と自覚はしてる。
でも、そんなかぁちゃんだったからこそ・・・



だからこそ今、物静かなかぁちゃんを愛らしいと思うんだなぁこれが。


コメント (2)
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