2002年の古い本でドラマ化もされました。5編の短編に分かれていて、徒にひっぱることもなく、読みやすい長さでした。第一章の「燃える」が一番しっくりきました。深夜まで屯して喧しいのはかなわんですからね。目が不自由な妹へ宛てた、声の手紙の録音をジャマされたのも同情できます。使われた武器の炭酸ガスレーザー光線もそれほど不自然な感じはしませんでした。でも他のはちょっと首を捻るものばかりでしたね。第二章「転写る」・・・雷による水の衝撃波でアルミ箔が死体にひっつくものかなぁ。第三章「壊死る」・・・家庭用電源で使える超音波加工機なんてコンパクトなものがあるんですかねぇ。第四章「爆ぜる」・・・理論的には可能なんでしょうけど、水とナトリウムの反応による爆発を海で起こせるものだろうか?第五章「離脱る」では、液体窒素と熱い空気が作り出した蜃気楼が登場します。これら怪事件解明の鍵を握るのが、警視庁捜査一課草薙刑事に常々アドバイスを送る帝都大理工学部湯川助教授。謎解きだけではなく、騒音問題、自己中で自堕落な女が作った借金、何でも他人のせいにする恨み節、自作自演してまでも名声を得たい欲にかられた父、といったその背景にある社会の営みと相まって、話を面白くさせてるんだと思いました。
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