その蜩の塒

徒然なるままに日暮し、されど物欲は捨てられず、そのホコタテと闘う遊行日記。ある意味めんどくさいブログ。

『かたい本』を読んでみました

2013年01月21日 | 本・雑誌
 橋爪大三郎氏は「異色の社会学者」との異名を持つ東工大の教授です。「売春のどこがわるい」という著書もあったりするからでしょうか。歯に衣着せぬ物言いで一刀両断に切り捨てるので、分かりやすく読んでて爽快な反面、少々乱暴で粗い持論を展開することがあるようにお見受けしました。例えば「日本には民主主義がない。なぜならキリスト教の読み換えだから」というような論理でしょうか。

 私が30年も前に学んだ政治学で最初に出てきたのは、15世紀後半の囲い込み(エンクロージャー)に始まり、ホッブズ、ロック、ルソーという社会契約を唱えた哲学者たちでした。しかし本書は教科書ではないですから、事細かに政治経済学史を解説している訳ではありません。ところでアベノミクスでは、ケインズ政策がとられています。つまり国家主導で税金を使い、国債を発行して公共事業を興して経済にはずみをつける政策です。多分に社会主義的な考え方です。ポスト消費社会と言われる現代には打つ手がないのでしょう。

 またマルクスの「利潤率低下の法則」は、資本主義社会が成熟すればするほど利潤率は下がり、資本家は儲からなくなっていく、というものです。それゆえ国外進出した結果利害の衝突がおき、帝国主義戦争がおこると予測しています。そして現代は民族、文化、宗教的背景の違いから、資本主義相互の矛盾を抱え混迷の時期にさしかかってます。(例えば、インドはカースト制度がジャマをして資本主義になりようがないなど)

 中国に関しては、インターネット時代に言論の統制を敷くのはムリがあり、天安門事件のようなのがおきる可能性がありますね。本書でも、中国共産党が労働者・資本家あるいは都市・農村どっちの味方なのかはっきりさせることができないので、それが反日運動につながっていると。いずれ限界がきて次の体制に移行するのではないかと述べています。でも今後、自動車を輸出するようになれば、日本にとってはかなりの脅威となるでしょう。

 ポスト冷戦時代になって、社会主義圏から自由経済の中に進出してきたり、国際分業や国境を越えたボーダレス化が進んで日本の競争力は落ちました。個人プレーを排除する日本文化の脆弱性が、とりわけソフト開発力の弱さにつながっている、というのはその通りだと思います。組織への帰属や国籍にしばられているため、次の局面を切り開けません。湾岸戦争以降、円高、オウム事件、沖縄基地問題、震災に対しての適応能力、危機管理能力のなさも露呈してます。組織の硬直化とトップダウンで決められないからです。グローバル的には、第3世界の人口増加が貧困を拡大再生産していることと地球環境の悪化があり、問題山積です。とまぁ、色々と考えさせられる一冊でした。
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