ホルモン屋徒然草~珍しホルブロだ

新米ホルモン屋の親爺の日々。ホルモンのこと、店の出来事、周辺の自然や話題。

開高健も探していたあの珍味が、とうとうワタシのお口に

2009-03-19 12:21:15 | ホルモン・肉
「をかしら屋盛岡大通店」のチーフT嬢に「をかしら屋松園東黒石野店」の店長I嬢からメールが届いた。
「この字はなんと読むんですか」と聞かれ、眼鏡をかけて小さい文字を見る。

まあ店長さん、嫁入り前の純真なT嬢にはいささか不似合いな言葉ですね。

「孕んだ」

さて、日本の舵取りのお偉いAさん、読めますかな。

「はらんだ」とお読みしますね。

で、いったい誰が孕んだんだ。

松園店の店長でも、大通店のT嬢でも、彼女らがいなければ店は成り立たないからちょいと困る。

困る、困る、とっても困ると、他人のメールではあるがお許しを頂いたので覗き見る。

なに?

なに、なに???

コブクロが「孕んだ」と。

いったい何のこっちゃと思いながら、「まさか」・・・。

メールじゃ話にならんと昔の男は電話を取る。
アナログだ。

そうか、あれかっ!!

松園店の店長の「経緯(いきさつ)」を聞いて納得。

今日、納品された豚コブクロが妙に膨らんでいるので何かなと思ったら、なかから産まれる前の子豚らしいのがいたんです!! という事なのだ。

こりゃあめでたい。

ホルモンの道に入り、まだ一里も進んでいない新米ホルモン屋の旦那であるから、まだまだ未知の部位や食べ方があるだろうが、前から思いを馳せていたこの珍味にようやく出会えるとは。

というのも、大好きな、そして敬愛してやまない作家の開高健がある本でこの産まれる前の子豚が、あの中国でも珍味中の珍味として呼ばれているといい、晩年、ようやく口にしたと書いていたのが頭の中に強く残っていたからだ。

それがいまようやく手に入ろうとする。

わくわくして経緯を話しているワタシの喜びの声に、しかし松園店の店長は「何いってんの」とばかりに当惑を隠せないでいた。

まあ、そりゃあそうか。
どう処理しようかって言うのに、「食べる」ってこたえるんだものな。

そして一夜明けた今朝、見てきました。

そして、食べました!!
この珍味を。

なんかニュルっと口に入り、無味無臭。
ああ、端から見れば残酷。
先週入ったばかりのパートさんもきょとんとしてみていたが、まさか変人の経営者の下では働けないと辞表を出すんじゃないよね?

はかなくも小さい命はワタシの胃袋へと旅立たれたのであります。

さてこのコブクロの中の産まれる前の羊水に浸かった子豚。
松園店から「従業員の研修のために」大通店に来て、今夜には無くなります。

ご興味のある方、農学部の学生、獣医さん。
見慣れているかもしれないけど、もし見てみようと思うなら今夜早めに来てください。

それでは写真を。



先ずは松園店で「ブツ」を確認。
お~、孕んでいる。



コブクロを割くと羊水に包まれた小さな小さな物体が。



あるよね!!



豚は一度に十数頭から二十頭くらいの子豚を産むらしい。
今日の母豚は片側に七頭、計十四頭かな。

それにしても通常、と場に来る母豚は子供を産み続け、もうだめよというおばあちゃん。
(あの~、ちと説明。普通に出荷されるのは生後6ヶ月の若い豚でして、他に選ばれた母豚さんたちがお役目を終えて来るわけです。大貫といいますね。母豚だから一般に出荷される若い豚より大きいからかな。コブクロも普通はこの若い豚のものがスーパーなんかに並びますが、「をかしら屋」では母豚のコブクロを使います。若いのはニュルっとして独特の歯ごたえがおいしいし、母豚のはしっかりした感じで、あとは好き好きですね)
何かの都合で、早めに出荷されたのかな?



コブクロを割いて、羊水の袋が出るところ。
羊水は肌にいいという。



ちょいと分かりづらいが、この赤いところに子豚がいる。



ほら、こんなかな。
きちんと豚の格好をしている。
まだ1~2㎝くらい。



遠目で見ると、こんな感じです。



もう一頭。
ぶっ倒れそうになった方は、もう見ないでね。(遅いか!?)



羊水の袋は意外に丈夫でした。

・・・・・

以上、報告を終わります。

(明日からワタシを変質者みたいにななめ目線で見られる方がいるかも。あのね~、わたしゃあ、食の追求者でありますから、珍しいものがあればどこでも行きますぞっと。)