あれは,あれで良いのかなPART2

世の中の様々なニュースをばっさり斬ってみます。
ブログ界の「おか上彰」を目指し、サボりながらも頑張ります!

銃の許可はかなり厳しいが・・

2007年12月16日 02時43分01秒 | 法律問題
長崎県佐世保市の散弾銃乱射事件は容疑者自殺という最悪のシナリオで幕を閉じました。
一方で,この容疑者が銃を所持していたことに対し,近隣住民から「許可するのはよろしくない」という意見が従前から警察に寄せられていたことが判明し,警察の銃所持許可の問題があったのではないかとの指摘がされています。

佐世保乱射 散弾銃許可めぐり論議も(産経新聞) - goo ニュース

警察の前に法律があるんだけど

例によって,テレビのコメンテーターは,鬼の首を取ったかのように「なんでこんな奴に銃を持たせたんだ」とか「そういう声があれば免許取り消せばいい」などと主張していました。
総論はそのとおりなのですが,そもそも銃の許可については,実は「許可は厳しいが,許可後は積極取消事例は少ない」というのが実情なのです。そして,それは別に警察がさぼっているからではなく,銃刀法の規定上,積極的に取り消す根拠が乏しいからなのです。
ちなみに,警察庁発行の白書では,平成17年の銃所持許可総数388,856うち,新規23,000,一方で許可取消119,紛失等による失効等34,953となっており,許可件数に対し,取消権数はごくわずかとなっています詳しくはこちら)。

そもそも,銃を所持する際には警察の許可が必要となりますが,この際の審査は世界有数の厳しさだそうです。許可できない欠格事項が結構定められているほか,親族に対する照会まで行い,そこで問題があると許可はしないという運用になっています。
そこで,そこで問題となるのが「近隣住民の意向は聞かないのか」という点です。現在の運用では,ごく例外を除いて近隣住民の意向までは聞きません。それは,個人のプライバシーの問題もありますが,法律上積極的に聞く根拠がないことや,近隣住民とのつきあいが希薄な現代社会では,まじめに銃で競技や狩猟を行おうとしても,隣近所とつきあいがなければ,おそらく「隣人が銃を持つことに賛成か」と聞かれれば「いいえ」と答えてしまい,許可にならないという事例が続出することが想定されるからです。
ちなみに,親族や近隣住民に意見を聞く根拠は,銃刀法5条にある欠格事由中「他人の生命若しくは財産又は公共の安全を害するおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者」の審査のためと言うことができますが,表現が抽象的なので,近隣住民に積極的に意見を聞く根拠としてはちょっと弱いのです。

まして,これで一度許可になりますと,原則3年ごとの許可更新となります。すなわち,事故が発生しない限り,警察は3年間現状を把握することができません。そして,そこでもしも5条欠格事由に該当すれば,許可は取消となります。
すなわち,近所の人が「あの人に銃を持たせたら危ないよ」という意見が寄せられたとしても,それが具体的に「公共の安全を害するおそれがあると認めるに足りる相当な理由」がない限り,警察は不許可,または許可取消ができないのです。
したがって,今回の長崎の件についても,佐世保警察を直ちに責めることはできないのです。
むしろ,現状の銃刀法が,所持後の取消規定が弱いという点の方に問題があるのです。したがって,まず議論すべきは,「警察の怠慢」ではなく「銃刀法の改正」にあるのです。具体的には,警察の調査権充実と更新期間短縮,さらには不許可事由のより明確化や,不許可にするか否か審査中の間の許可一時停止の規定などを設け,「銃を持つまではもちろん,持ってからも厳しいですよ」という点を充実させる必要があります。一方で,近隣住民もいろいろいますので,近所の人が言った=即不許可というあいまいなルールではなく,この点もより明確となるようなルールづくりも必要となります。そうなれば,警察も動きやすくなるでしょう。

もちろん,現状の規定でも,まじめに銃を扱っている人たちからすると,「かなり厳しい」という声を聞きます。確かにそうかもしれませんが,タバコの禁煙場所が増えてきたのと同様,銃を使うバカな犯罪が増えてきている以上,多少の制約はやむを得ないといえるでしょう。むしろ,銃仲間での結束を高め,「銃の犯罪は絶対に防ごう」という動きになればよいとは思いますが。

とにかく,銃に関する犯罪は確実に増えています。銃犯罪は重大事件に発展しやすいだけに,厳しい規制はやむを得ないでしょう。まじめな銃使用者には本当に酷かもしれませんが,馬鹿者がいなくなるまでは厳しい規制に協力してほしいものです。

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12 コメント

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なるほど (takeyan)
2007-12-16 03:19:42
銃の所持に関する素朴な疑問がほとんど解けた気がします。こういう解説はおかにゃんさんの真骨頂ですね!
返信する
Unknown (とも)
2007-12-16 17:42:06
所持許可の可否は近所の意向によって左右はされない
(というか,所持させるがよいか?という聞き方はしない)
ですが,どのような人物であるかの聞き込みは結構されます.
酒を飲んだらどうなるかとか,そんな話が多いようです.

また金銭関係のトラブルを抱えていたりすれば簡単には
許可の更新はされないと思います.今までは警察も
まあそこまでしなくていいだろうと思っていたのか
更新時にはやってなかった調査もやるようになって
きてますから,今後は結構厳しくなると思いますね.

基本的には善良な市民は射撃や狩猟といった目的があれば
所持が許可されるというのは国民の権利なのですから,
このことでむやみやたらと許可しなくなることになるのは
かえっておかしなことになると思います.より適正な許可の
方法を考えるのが正解でしょう.
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takeyanさま,コメントありがとうございました (おかにゃん)
2007-12-16 18:01:04
こんばんは。
許可や免許などという行政行為は,安易に感情に流されてはいけませんが,一方で常時社会情勢を踏まえた見直しが必要といえるでしょうね。
そして,適切な批判をするには,まずは現状の制度を把握するべきだと思います。この点をすっ飛ばしている人が著名人に意外と多いのが残念なところです。
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ともさま,コメントありがとうございました (おかにゃん)
2007-12-16 18:04:39
こんばんは。
おそらく今回の事件を腹立たしく感じている方の一人だと思います。お待ちしていました。
さて,何でも厳しくするとなると,次の問題は「アンカバー(無免許)」が増えるという点が懸念されます。もちろん,無許可に対する処罰規定を重くすれば良いのかもしれませんが,本当に銃の犯罪を減らすためには,「適切な許可,適切な許可更新」にあるといえます。
そういう点では,今の許可制度というより,更新制度,取り消し規定を強化するということが大切なのではと思います。「許可をもらえばこっちのもの」と考える輩を排除するべきなのです。
実際,こんな輩の存在が,まじめに射撃を行っている人たちに多大な迷惑をかけているのではないでしょうか。
返信する
必要性 (時評親爺)
2007-12-16 20:14:11
お晩にございます。晩まんま終了であります

ん~、不肖は・・・

> 現状の銃刀法が,所持後の取消規定が弱いという点の方に問題がある
> まず議論すべきは,「警察の怠慢」ではなく「銃刀法の改正」にある

ここいらへん↑の意見に大賛成であります

現実に今回のような事件が起こって、先日には銃の管理に起因する暴発死亡事故もあったり、世間様の見方は厳しい方向に向うものと、ボンクラめは感じる次第であります(自身も向かっている汗)

> 近所の人が言った=即不許可というあいまいなルールではなく,
> この点もより明確となるようなルールづくりも必要

こちら↑も御意にございます(御意汗)。法規定がなければ、付近住民の危機感は理解できても法の施行・施策として動けないのも確かであります。

ご指摘のように、銃規制の強化によって正当な方々が窮屈になるのは、全体(公共)の福祉という観点からすれば止むを得ないと感じる次第でもあります。
返信する
時評親爺さま,コメントありがとうございました (おかにゃん)
2007-12-16 20:46:43
こんばんは。
日本は法治国家である以上,さまざまな規制もすべて法によらなければなりません。警察官の独断ですべて決めてしまっては,どこぞの独裁国家や戦前の特高警察などと変わらなくなってしまい,市民の安全がかえって脅かされることになりかねません。
「警察がちゃんとやれ」という議論は結構ですが,まずは「現状がどうなっているのか」ということを知ることが大切だと思います。
返信する
もしかして (よしお)
2007-12-17 00:48:53
これも例の「無謬性神話」の発露?

事前申請は世界一厳しく、免許取得後は「免許出した警察判断に間違いはなかった」‥‥とか。

平成刀狩は必要だと思います。
既得権者のマタギがどのくらい残っているのか知りませんが、いまやそのほとんどが「趣味の世界」の話ですよね。
もちろん不法所持も一掃願うものです。
返信する
よしおさま、コメントありがとうございました (おかにゃん)
2007-12-17 01:03:06
こんばんは。
今の制度では、どうしても「出しっぱなし」にならざるを得ない部分があるのは否めません。
まずは、今一度現状をちゃんと把握した上で、警察が動きやすいような法改正が必要といえるでしょう。
もちろん、不正所持を一掃することは言うまでもありません。
返信する
Unknown (とも)
2007-12-17 13:35:06
猟銃の所持許可の更新は,運転免許の更新と同じように
行われていると思っている人が多いかも知れませんが,
基本的には新規に許可を取得するのと同じ審査が行われます.

家に来ていろいろ話をしたり,近所への聞き込みもしている
ようです.明らかに問題点がある人には更新を許可しないはず
なんですが,所轄あるいは担当官によってはその辺の聞き込みを
かなり端折ってしまうところがある可能性はあります.
多分今後は文字通りしっかりやるようにとの通達が出ると
思います.

まじめにやってる人も多少窮屈になるのは仕方ないとは
思っていると思いますが,より精度の高い所持不適格者の
洗い出しの方法が見つかることを期待しています.

余談ですけど,「こういう人は銃を持てるようにすべきではない」
という規制よりも,「こういう銃はだめ」という規制の方が
多いんですよ.徹底的にその人の適性を洗い出すことは
重要だと思いますが,例えば銃床にピストルグリップが
ついてちゃだめ,とか意味不明な規制があります.
有名な規制の一つとして軍用銃はだめってこと.昔の
歩兵銃とかも普通は持てません.これはすべき規制とは
思えません.
(連射機能はだめってのは分かるのですが....ちなみに
個人がゼロ戦を持つのもいけないこととなっています.
なぜならゼロ戦は昔のものだけど戦闘機だから....
その理由変でしょ?武装してなくてもだめなんです)

規制すべきところと,規制すべきではないところ,
もう一度よく考えて欲しいと思います.

ところで多くの人には「自分の趣味じゃないから,
そんなの関係ねぇ」と所持を許可すること自体がおかしい
なんて思っている人が多いですが,自分の大事な趣味が
「それはどうせ趣味だからやるな」というようになったら,
それは赤い国となんら変わりません.

車もスポーツカー禁止,自家用車は走れれば十分なんだから
みんなスバル360,省エネのために買い物と通勤などの
目的以外での使用は禁止(週末のドライブも当然だめ),
なんてなったらどう思います?まあそれでも私は困りませんが
だからといって賛成は出来ませんね~.
返信する
必要最低限にして欲しい (てるりん)
2007-12-17 20:26:50
一般市民レベルでは理解しがたい問題ですね。
私の身内には動物ハンターしてる人がいます。狩猟の目的なら私も理解できるのですが、それ以外に何故銃が必要なのか、私にはまったく理解できません。趣味として持つなら殺傷力のないものに限定することはできないのでしょうか?また使うためのルールをしっかり決めるべきだと思います。
免許のあり方も改正が必要でしょうが、無免許で持ってる人も少なくないと思うので、今回のような悲惨な事件が起こらないような対策を早急にやって欲しいものです。
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