あれは,あれで良いのかなPART2

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体罰は許されないが,毅然とした対応は当然許される

2009年04月29日 22時37分23秒 | 裁判・犯罪
小2男児が学校で教師から胸ぐらをつかまれて壁に押しつけられたことは体罰に当たるなどとして,学校を管理する市に対する国家賠償訴訟について,最高裁は,市の責任を一部認容した高裁判決を破棄し,男児の親からの請求を棄却する判決を言い渡しました。
このなかで,教師の行為が体罰に当たるか否かについて明確な基準を立てており,今後の教育界に少なからぬ影響を与えそうです。

胸元つかみ「体罰に当たらず」=教員の実力行使、初容認=「指導の範囲」・最高裁(時事通信) - goo ニュース

教師がきちんと指導できる環境を作ってあげよう

この最高裁判決,ものすごく妥当であると思います(判決原文はこちら)。
今回の最高裁判決を要約すると,おおよそこんな感じになります。
第1 事実の概要
1 小2男児が,別の児童に指導中の教師にちょっかいをだしたので,止めるように言ったが,一向に止めなかったのでそれをふりほどいた。
2 そしてら,この児童は,もう一人の男児と近くを通りがかった小6女児3名蹴り始めたので,この教師はそれを止めるよう指導した。
3 教師が職員室に帰ろうとしたら,この児童がこの教師の尻を2回蹴ってきたので,教師はこの児童を追いかけて捕まえて胸ぐらをつかんで壁に押しつけ,「二度とやるな」と注意した(これが問題の行為とされた。)。
4 この児童が,この日の夜10時頃,自宅で泣き出して「先生に暴力された」と訴えた。この児童は,その後,しばらく夜中に泣き叫べ食欲が減るなどの症状が出たが,その後改善した。
5 一方,この児童の母親は,長期間にわたって,この学校関係者等に対し,極めて激しい抗議行動を続けた。

第2 高裁の判断理由(約21万円の損害賠償を認めた)
1 胸ぐらをつかむという行為はけんかで使う手法であり,今回の場合であれば,もっと別の方法があったはずだ。
2 教師と児童との間の年齢差,体格差,面識がなかったことなどを考えると児童の恐怖心は相当なものであったと思われる。
3 だから体罰だ。

第3 最高裁の判断(請求棄却)
1 この教師の行為は,あくまでもこの児童の「悪ふざけ」について,それを止めるよう指導するためのものであり,この児童に肉体的苦痛を与えてやろうとおもってやったのではない。
2 もちろん,この教師がむっとしてやった行為ともいえるので,穏当を欠くところがなかったとはいえない。
3 でも,教師の行為は「目的,態様,継続時間」から判断すると,教育的指導を逸脱したとはいえず,体罰にはならない。

以上が判決内容です。
つまり,誤解のないようにいうと,最高裁は「体罰を容認」したのではなく,罰と教育的指導との分水嶺として「行為の目的,態様,継続時間」という基準を設け,それに当てはめて検討する,という基準を設けたにすぎません。したがって,体罰を禁止している学校教育法それ自体の是非については全く言及していません。
また,高裁は「教師の体格差」など外形面から児童の恐怖心を認定し,体罰認定しましたが,最高裁はこれを否定しました。おそらく,これを認めると,普通,小学校ではほぼ100%教師が大きいため,それだけで教師の行為が無条件に体罰なってしまうからではないかと思われます。
一方で,最高裁は,この児童の母親がいわゆる「クレーマー」であると高裁が事実認定した部分をそのまま是認しましたが,一方で本件判決には,そのクレーム行為と請求棄却の相関関係については特に言及していません。もっというと,「なぜ事実認定でそのことに言及したのであろうか」という点は若干気になるところではあります(おそらく,本件判決の結論に至るための背景的事情を説明したのであろうと思われます。決して「クレーマーだから請求棄却だ」という乱暴な判決ではありません。誤解のないように!)。

いずれにせよ,今回の判例により,教師は「教育的指導としての一定の有形力の行使」が可能であるということになります。繰り返しますが,体罰容認ではありません。
したがって,例えば殴りかかってきた児童に殴り返すという事案の場合は,微妙な問題が残りますが(高校生くらいなら正当防衛を認めてよいでしょうが,小1くらいだったら,殴り返す必要はない,ってことになるでしょう),頭や肩を短時間手で押さえ込むということであれば,それが明確な指導目的ということである限り容認されることになります。
近年,「片面的権利意識」(権利だけ主張し,義務はないがしろにすること)が横行している節があり,中には教師が生徒に触れただけで,「体罰だ」「セクハラだ」などと訴えてきて,学校や教師がその生徒に謝罪するという事例が増えてきました。悪いのは生徒のはずなのに,そいつに謝罪することで,ますます「悪さ」が助長されてしまっているようです(学校もその生徒に手出しできなくなるので,やりたい放題になるケースがあります。)。
しかし,今回の判例では,そういう「いちゃもん」に対しては真っ向勝負できることになります。教師としては,「強い信念をもった指導」を安心してできるということになります。
あとは,「教育委員会がどの程度フォローできるか」という点です。実は,及び腰になっているのは,教育委員会の方です。いわゆるモンスターペアレレンツも,学校だけでなく教育委員会にいろいろ言ってくるという事例がかなりあり,基本役所の教育委員会としては,「うるさいから穏便に済ます」「自分がいるときに不祥事を出したくない」など官僚的判断で,その親の言うなりになってしまうケースもあるやと聞いています。
しかし,今回の判例で,教育委員会としても,「体罰か否か」の調査が行いやすくなったといえます。比較的客観的に判断できるからです。
したがって,教育委員会も,これを機に「教師も守る」というスタンスのもと,もっと毅然とした対応を取れるようにするべきでしょう。
もちろん,いじめの対応や,ダメ教師問題などもありますので,親の言うことを聞かなければならない場面もあります。つまり,「ちゃんと話を聞いて,是非を判断する」ということをやらねばなりません。

この判例,法律論以外の部分でも考えさせることはかなりあります。ただ,「教師のやる気」を失わせない内容であったなあと思います。
また,「何でもかんでも体罰」と報じる報道姿勢に対しても,一定の警鐘を鳴らしたのかな,っていう気がします。報道側も,「すわ体罰か?」という事例を入手した場合は,報じる前に,この基準に当てはめた検証を行ったうえで,体罰か否かを独自視点で報じるべきです。

教師のやる気をなくしてしまうと,この国の未来は絶望的になります。

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