中国で発生した大地震は,日がたつに連れて被害状況が徐々に判明してきました。また,この地は30数年前にも大地震が発生したにもかかわらず,その後地震対策が講じられてこなかったなど災害対策などにも問題があったのではないかと専門家などからも指摘されるようになってきました。
内陸地震被害想定 近畿74兆円、中部は33兆円(朝日新聞) - goo ニュース
この地震から日本も学ぶべき点はあるはず
この一連のニュースに対し,一部マスコミは単に「中国の災害対策が甘い。日本の基準ならもっと被害が押さえられたはず。」などと中国の政策に対して苦言を呈しています。
確かにその苦言自体は正論だと思いますが,では果たして日本の防災対策は万全といえるでしょうか。同じような地震が日本で発生したときに,死者0人に抑えられるでしょうか。
結論から言えば,無理です。もちろん,法令上の規制が厳しい日本の手法からすれば「中国よりはまし」ということにはなるとは思いますが,それにしてもまだまだ改良の余地はあります。
そもそも,各市町村等で地域防災計画を作ってありますが,この計画自体いろいろと問題点があることは既に指摘済みのとおりです(詳しくは「地域防災計画について考える」と「最近のニュースからあらためて地域防災計画を考えてみる」をご覧下さい。)。
今回の中国では何が問題だったかというと,大きく分けて次の点にあるといえるでしょう。
1 建物の耐震強度が弱かった
2 国内の救助隊がくるのに相当時間がかかった
3 避難所の設置場所や非常食配布方法があまりに場当たり的だった
4 国際的救助要請に時間がかかった
5 住民に対する情報提供がほとんどなく,デマに翻弄された
以上の問題は,今の日本でもまだまだ起こりうる問題です。
1については,確かに今の建築基準法では問題ないですが(ただし,偽装マンションがあり得るという爆弾もありますが),古い家が多いため,倒壊の危険性がある建物はまだまだ多いです。また,公共施設(特に学校)の耐震補強はまだ半数以上が未着手であるため,中国のように学校が崩壊して生徒が巻き込まれる危険性は残っています。さらに,公共施設は災害対策本部になるため,その災害対策本部自体が崩壊して本部が機能しないというリスクもかなりあります。
2については,災害本部長(市町村長)の要請でその町の知事から自衛隊に対する災害派遣要請をする仕切になっています。ところが,市町村の災害本部が前述の理由や他の人的理由などで機能しなかったら,派遣に時間がかかります。また,近隣市町村に対する消防隊派遣要請も,「まず自分の町優先」となりますから,最初の数時間が限られた人数で救助活動を行わざるを得ません。もし消防署が被害に遭っていたら,もはや手の打ちようはありませんし,山村などで道路が寸断された,陸の孤島になってしまいます。
3については,日本では計画が整備されているものの,実はまだまだ多くの住民が「どこに避難するべきか」「避難時に何を持っていくか」などを把握していないというのが実情のようです。事実,私は4月に引っ越してきましたが,未だに避難場所がどこなのか全く分かりませんし,市から災害マップなどは一切配布されていません。市の担当者に確認しても,「特に地図みたいのはないです。」と素っ気ない回答で終わっています。
また,避難場所は「住民単位」となっていますが,ビジネス街やショッピング街では「多数の労働者や買い物客」も避難場所に押し掛けてきます。これに対応できる計画を策定している市区町村はまだ少ないでしょうから,そこでは非常食の取り合いなどが発生するおそれもあります。
なお,当然ですの前提ですが,非常食とは,本来は「各個人が準備しておくべきもの」なのです。
4については,地域防災計画の範疇ではないため,災害担当大臣がどうやって腹を決めるかがポイントとなります。
5については,日本ではそもそも中国と比較すると情報公開が進んでいることや,防災無線を整備するなど,ある程度情報確保が可能となっています。しかし,地震が発生して避難所に来た後の情報については,意外と情報難民となってしまうケースがあるようです。結局,「誰に何を聞いたらよいか分からない」という自体に陥りやすいのです。
以上の点を踏まえると,日本で大規模災害が発生した場合,中国ほどでないにしてもそれに近い事態に発展する可能性はありうるのです。
それを最小限にするためにも,是非とも今回の中国の状況をしっかりと検証し,日本において(または市町村において)修正するべき点があれば早急に対応するという作業が必要でしょう。
いつも同じことを言いますが,「地域防災計画は作って終わりというものではない」ということを常に念頭に置くべきです。
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内陸地震被害想定 近畿74兆円、中部は33兆円(朝日新聞) - goo ニュース
この地震から日本も学ぶべき点はあるはず
この一連のニュースに対し,一部マスコミは単に「中国の災害対策が甘い。日本の基準ならもっと被害が押さえられたはず。」などと中国の政策に対して苦言を呈しています。
確かにその苦言自体は正論だと思いますが,では果たして日本の防災対策は万全といえるでしょうか。同じような地震が日本で発生したときに,死者0人に抑えられるでしょうか。
結論から言えば,無理です。もちろん,法令上の規制が厳しい日本の手法からすれば「中国よりはまし」ということにはなるとは思いますが,それにしてもまだまだ改良の余地はあります。
そもそも,各市町村等で地域防災計画を作ってありますが,この計画自体いろいろと問題点があることは既に指摘済みのとおりです(詳しくは「地域防災計画について考える」と「最近のニュースからあらためて地域防災計画を考えてみる」をご覧下さい。)。
今回の中国では何が問題だったかというと,大きく分けて次の点にあるといえるでしょう。
1 建物の耐震強度が弱かった
2 国内の救助隊がくるのに相当時間がかかった
3 避難所の設置場所や非常食配布方法があまりに場当たり的だった
4 国際的救助要請に時間がかかった
5 住民に対する情報提供がほとんどなく,デマに翻弄された
以上の問題は,今の日本でもまだまだ起こりうる問題です。
1については,確かに今の建築基準法では問題ないですが(ただし,偽装マンションがあり得るという爆弾もありますが),古い家が多いため,倒壊の危険性がある建物はまだまだ多いです。また,公共施設(特に学校)の耐震補強はまだ半数以上が未着手であるため,中国のように学校が崩壊して生徒が巻き込まれる危険性は残っています。さらに,公共施設は災害対策本部になるため,その災害対策本部自体が崩壊して本部が機能しないというリスクもかなりあります。
2については,災害本部長(市町村長)の要請でその町の知事から自衛隊に対する災害派遣要請をする仕切になっています。ところが,市町村の災害本部が前述の理由や他の人的理由などで機能しなかったら,派遣に時間がかかります。また,近隣市町村に対する消防隊派遣要請も,「まず自分の町優先」となりますから,最初の数時間が限られた人数で救助活動を行わざるを得ません。もし消防署が被害に遭っていたら,もはや手の打ちようはありませんし,山村などで道路が寸断された,陸の孤島になってしまいます。
3については,日本では計画が整備されているものの,実はまだまだ多くの住民が「どこに避難するべきか」「避難時に何を持っていくか」などを把握していないというのが実情のようです。事実,私は4月に引っ越してきましたが,未だに避難場所がどこなのか全く分かりませんし,市から災害マップなどは一切配布されていません。市の担当者に確認しても,「特に地図みたいのはないです。」と素っ気ない回答で終わっています。
また,避難場所は「住民単位」となっていますが,ビジネス街やショッピング街では「多数の労働者や買い物客」も避難場所に押し掛けてきます。これに対応できる計画を策定している市区町村はまだ少ないでしょうから,そこでは非常食の取り合いなどが発生するおそれもあります。
なお,当然ですの前提ですが,非常食とは,本来は「各個人が準備しておくべきもの」なのです。
4については,地域防災計画の範疇ではないため,災害担当大臣がどうやって腹を決めるかがポイントとなります。
5については,日本ではそもそも中国と比較すると情報公開が進んでいることや,防災無線を整備するなど,ある程度情報確保が可能となっています。しかし,地震が発生して避難所に来た後の情報については,意外と情報難民となってしまうケースがあるようです。結局,「誰に何を聞いたらよいか分からない」という自体に陥りやすいのです。
以上の点を踏まえると,日本で大規模災害が発生した場合,中国ほどでないにしてもそれに近い事態に発展する可能性はありうるのです。
それを最小限にするためにも,是非とも今回の中国の状況をしっかりと検証し,日本において(または市町村において)修正するべき点があれば早急に対応するという作業が必要でしょう。
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