あれは,あれで良いのかなPART2

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右からきた税金を左へ垂れ流す

2007年11月11日 00時42分06秒 | 増税問題
会計検査院が18年度の決算検査報告書を提出しました。その中で,税金の無駄遣いや徴収漏れなどの合計が310億円あることを指摘しました。ちなみに,これは去年よりも142億円減少したとのことです。

税金の無駄310億円指摘=「常連」厚労省がワースト-06年度決算報告・検査院 (時事通信) - goo ニュース

無駄遣いの原因は?

この報道をみて,「税金の無駄遣いはけしからん」「これで増税なんてありえない」などとお怒りの方々も多いのではないでしょうか。
確かに,その怒りは間違っていませんし,1円たりとも無駄な使い方などをなくすことが国や自治体には強く求められます。
ただ,この報道からは見えてこない部分があります。それは,「何を無駄といっているのか」と「無駄の原因は何か」という点です。
そこで,この点について少々補足したいと思います。

まず,今回会計検査院が指摘したのは,「法令上の不適切な支出」と「法令上得るべき収入を適法に得ていない」という点にあります。前者の例は,法律上支出してはいけない手当てを支出したものや,法令上の要件を具備しない補助金の支出などがあげられます。また,契約金額の算定がおかしいものなども上げられるでしょう。
一方,後者の例は,理由なく手数料を徴収しなかったり免除してしまったことなどがあげられます。
つまり,会計検査院が指摘したのは,「違法または不適切な収支」についてということなのです。
一方で,「事業それ自体」を不適切ということは,会計検査院の権限にはありません。つまり,「無駄な事業を指摘する」ということまで会計検査院が言うことはできないのです。もちろん,厳密には,重複事業や法令外事業などについて「不適切事業」として指摘することもありますが,いわゆる「これって,税金の無駄遣いな公共事業だよねえ。」といわれるような事業に対しては,ストレートに「無駄」とはいえないのです。
したがって,ここでいう310億円とは,「形式的無駄遣い」にすぎないわけです。
そう考えると,この金額,やはり「氷山の一角」といわざるを得ません。

次に,無駄遣いの原因を考えて見ましょう。
まず,会計検査院が指摘するような「形式的無駄遣い」が発生する原因は,うっかりミスもありますが,「長年の労使慣例」や「法令を知らない」,さらには「何も考えない前例踏襲主義」などがあげられます。さらには,「業者との癒着による調整」なども当然想定されます(契約金額などは,言い値のままにやってしまうなどがその典型例です。)。
これらについては,他の企業同様,国や自治体も「コンプライアンス」の徹底と,「アカウンタビリティ」の充実,さらには会計検査院の権限強化などにより対応することが可能といえるでしょう。言い方を変えると,「情報公開が進んでいる官庁ほど,無駄遣いは少ない可能性が高い」といえるでしょう。

問題なのは,「実質的無駄遣い」の方です。実は,ここに大きな問題があり,そもそも「何をもって無駄遣いというのか」という定義があいまいなのです。
例えば,人口100人の山間の村(途中に大きな川や谷があるとする)と村の中心街を結ぶ道路を作る場合,橋を作り,トンネルを掘るなどしてものすごい金額がかかるとします。一方で,利用するのは村民100人中半分の50人にすぎません。この事例において,「この道路工事は無駄遣いである」といえるでしょうか?結論から言えば,「この情報だけでは無駄か無駄じゃないか分からない」というのが正解でしょう。50人しか使わないから費用対効果に合わず無駄というのはあまりに人の生活を無視した発想ですが,一方でそのために4車線の道路を作ったとすれば,そりゃさすがに無駄でしょうということになるわけです。ただ,「じゃあ,どんな道路なら無駄じゃないのか」といわれると,「事業計画全体見ないと分からない」ということになるわけです。橋の規模は,トンネルの距離は,代替措置の可能性は,道路構造はなどなど多角的に見ていく必要があるわけです。
このように,無駄と有益の切り分けが難しいため,会計検査院は「事業自体の無駄」については指摘できないのです。
したがって,「実質的無駄遣い」を考える上で,まず「ある程度の定義づけ」が必要といえるでしょう。
この辺は偉い先生にお願いすればよいでしょうが,私としてはこのような定義を提案したいと思います。あくまでもたたき台程度で。
1 事業計画の根拠数値が不明確(事業完成における効果が計算式が示されずどんぶり勘定的に出ているとすると,効果は後付の可能性が高い)
2 突然湧き上がった計画(そもそも必要がないのに何らかの事情で急に行うことになったとすると,無計画な事業である可能性が高い)
3 一部有力者(議員など)の要望だけで計画が出来上がった(利権が見え隠れしている可能性が高い)
4 補助金の基準にあまりにピッタリの事業計画である(本来は事業計画に見合った補助金があれば始めてもらえるというものだが,補助金狙いのために事業規模を拡大して補助金基準を満たしている可能性が高い)
5 似たような施設が近くにある(本来は必要ないものが,いろいろなしがらみと妥協の産物として作ることになった可能性が高い)
6 「福祉目的」「人道的」などを前面に出している(福祉関係の事業自体は大切なのですが,福祉目的という名において,実際は単なる「ばらまき事業」という可能性も否定できないため)
以上が私の考える「無駄な事業」の定義です。もちろん,この定義自体も大雑把なので,当然そのまま使える代物ではありませんが,このように定義づけをすることで,「無駄か否か」を考えることができるでしょう。

いずれにしても,無駄遣いはとにかくすべて是正する必要があります。当然のことながら,それを見張るべき議員自身が,まず「自分の周りで無駄なことはないのか」をしっかりチェックするべきでしょう。それがチェックできない議員は,有権者がそれをチェックして「チェックできる議員」に取り替えるべきなのです。
つまり,究極的には「有権者が無駄遣いをしっかりチェックする」ということになるわけです。

私たちは,もっと税金の使い方について厳しく見ていく必要があります。そのためにも,「高いから無駄,安いからいい」などという短絡的な発想ではなく,もっと広い視点から事業などを見ていく必要があるのでしょう。その上で,やはり無駄だという事業に対しては,「無駄遣いはけしからん」と声高に叫ぶことが大切なのでしょうね。

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