雨降りお月さん 雲の上 お嫁に行くときゃ 誰と行く ひとりで唐傘差して行く 唐傘ないときゃ 誰と行く シャンシャンシャラリコ 鈴つけた お馬に揺られて 濡れて行く
童謡唱歌をつい口ずさんでしまった。記憶が正確ではないかもしれない。ネットで調べようとしたが、凍結してしまって、動かない。この頃よく起こる。
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お月さんが出ているから夜。雨が降っているから、それも見えない。雲の上だけを照らしている。もうすぐわたしはあの人の処へお嫁に行く。ふっとそのことが頭を占める。お嫁入りの日に、雨が降ったらどうしたらいいかということが心配になってくる。仲人さんに手を引かれて行列して行くはずなのだが、花嫁衣装は雨に濡れる訳にはいかない。行列は中止となってしまいかねない。そうしたらどうしよう。
一人ででも行こうと思う。唐傘を差して、花嫁衣装の裾をひっからげて行こう、あの人の処へ行こう、と。大きな大きな唐傘でなければなるまい。それが用意できなかったら? 誰もついてきてはくれまい。そしたらどうしよう。心配ばかりを追い掛ける。
お馬を厩から出して来て、これにシャンシャンシャンと鳴る鈴をつけて、これに跨がって行こう、一人ででもあの人の処へ行こう、と決断をする。雨が降っている。光を差してくれるはずの月の光は雲の上にあって、地上へは届いて来ない。闇夜である。闇夜に鳴ってもあの人の処へ行こう。馬の鞍の上では花嫁衣装が濡れてしまう。髪に被っている白い鬼の角隠しも濡れてしまう。
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いい歌詞だなあ。泣けてくるなあ。作詞をした人はどんな人だったんだろう。こんないい歌詞が書けたらいいなあ。
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今日は雨。雨が降っていても、わたしに歌はできない。わたしに詩はできない。