心なきものにもあるか白雪は君が来る日に降るべきものか 大愚良寛
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歌中の「君」は5歳離れた禅師の弟に当たる由之(よしゆき)のことです。この歌は天保元年(1830年)12月25日に詠まれています。この日与板から山坂を越えて弟が兄を見舞って来ました。病が相当に重くなっていたのでしょう。その10日後、1月6日には亡くなっています。享年74歳でした。新潟の12月ですから寒いのです。おまけに雪が降ってしまいました。弟も文人です。上記の歌を詠んで迎えました。
あなたがこうして山坂を越えて折角見舞いにやって来てくれたというのに、その篤い情けを汲まないで、このように大雪になってしまったようだ。此処までの道程さぞかし難渋をしただろう。寒かったであろう。わたしは十分にあなたのやさしい心を有り難く思っていますよ、といたわりの言葉を掛けています。弟の由之もその3年後に亡くなりました。
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さぶろうにも4歳離れた弟がいます。残念なことに、一昨年の10月末に亡くなりました。我が家の仏檀にも大きな遺影が飾られています。それでいつも声を掛けています。良寬様は弟に見舞ってもらっています。兄が先に死んだのです。ですが、さぶろうは弟の方が先に亡くなってしまいました。良寬様の此の歌を読むと、それが思い出されて悲しいのです。