オリーブの熟るる実に似る児らの眼が一粒ごとに海を宿せる (NHK短歌の時間の入選作品より)
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ここはオリーブの産地の小豆島だろうか。海は穏やかな瀬戸内海だろうか。あどけない児らがたくさんいる。黒い眼がどれも海を見ている。一つ一つに青い海が宿っている。青い海は希望の象徴かもしれない。児らの希望だけではなく、それはそれを見ている大人達にも拡大されている。
そのつぶらな眼が熟れたオリーブの実に似ているというのだが、残念ながら僕はオリーブが熟れた姿に接したことがない。オリーブの熟れる頃にきっと何か物語があったのだろうが、この歌からはそれも僕には伝わらない。困った。困ったが、「海を宿せる」という結句がやけに新鮮だった。児らの瞳がいつまでもいつまでも海を宿しているようで。