The Game is Afoot

ミステリ関連を中心に 海外ドラマ、映画、小説等々思いつくまま書いています。

『死神刑事』 大倉崇裕 著

2019-03-13 | ブックレヴュー&情報
『死神刑事(デカ』

大倉崇裕著
幻冬舎刊 :2018/9/20 

内容(「BOOK」データベースより)
一年前に起きた『星乃洋太郎殺害事件』で、逮捕された容疑者に無罪判決が下された。時を同じ
くして、当事捜査に加わっていた大塚東警察署刑事課・大邊誠のもとに一人の男が現れる。男の
名は、儀藤堅忍。警視庁内にある謎の部署でひとり、無罪確定と同時にその事件の再捜査を始
める男だ。警察組織の敗北に等しい無罪判決。再捜査はその傷を抉り出すことを意味した。儀藤
の相棒になる者は組織から疎まれ、出世の道も閉ざされることになる。その為、儀藤に付いた渾
名は“死神”。大邊は、その相棒に選ばれ、否応無しに再捜査に加わることに―(「死神の目」より)。
新感覚警察小説。

内容は以下の短編4作になっています
死者の目
死者の手
死者の顔
死者の背中

表紙の絵とタイトルからホラーミステリと勘違いしそうですが、全く違うんです。
普段いわゆる”警察小説”というのは余り読まないのですが、タイトルが気になり何となく手に取り
読みました。チョット変わった警察小説で、兎に角面白かったです。

”死神”と言われる儀藤堅忍(ぎとう けんにん)は警視庁内にある謎の部署に属し、逮捕され無罪
判決が下されると その事件の再調査を行い真犯人を探し出すという刑事。
「逃げ得は許さない」という信条の元行動するこの刑事のキャラクターが変っているのです。
外見は地味で小太り、黒縁メガネをかけた中年男。。 「警部補 儀藤堅忍」という所属部署も連
絡先も書かれていない名刺を持ち、初対面の挨拶が「警視庁の方から来ました・・・・」という怪
しげなセリフ。
(一時問題になりましたね、「消防署の方から来ました」っていう詐欺が。 思い出しました。)

再捜査の相棒に選ばれるのは 事件当時捜査に係わっていた人物。
しかし、事件の再調査で判決を覆す事は警察にとっては不祥事で、敗北を意味する事になる。
そんな訳で、その都度相棒に選ばれた者は組織からうとまれ出世の道を閉ざされる事となる為
儀藤は”死神”と呼ばれる様になったんですね。
しかし、
この一見さえない風貌の儀藤さんがそれぞれの事件を小気味よく解決していきます。

最近のミステリ、警察小説の主人公はというと、何故か「美形」、「彫刻の様な」とか、「イケメン」
とかが多い中、この儀藤さんは珍しいキャラクターです。
ところが、この”冴えない”警部補は着実に、そして的確に真相を見極めて行く。 思いもよらずフィ
ジカル面も際立っている事も判明。
謎めいて 一風変わった儀藤が次第にカッコよく思えてくるのです。
そして、それぞれ選ばれた相棒も個性豊かであり、始めは疑いながら、そして嫌々行動を共にしてい
た儀藤を最後には観直し、好ましく思う様になる。
そして事件が解決すると儀藤はその都度相棒達にそれぞれ警察内での身の置きどころを考えている。

この”儀藤さん”は一体どんな人なんだろう? 
一見飄々としている様で、周囲の思惑は無関心の様に振舞ってはいるが 心の中は思いやりも持って
いる様だし。
独り暮らしと語っていたけど、プライベートも謎。
警視庁内での立場、身分も謎(色々謎の連絡網も持っている様) 
本当に警察官なのだろうか? 正体は?
興味が深まって来ます。

しかし”死神刑事”というタイトルは勘違いしそうで、もしかしたら損をしているかも、とも思わされ
ますが・・・・。

兎に角、この儀藤というキャラクターがとても気に入りました。
シリーズ化を期待したい作品です。