The Game is Afoot

ミステリ関連を中心に 海外ドラマ、映画、小説等々思いつくまま書いています。

『グッド・オーメンズ』 ニール・ゲイマン&テリー・プラチェット著

2019-03-02 |  ∟グッド・オーメンズ
”Good Omens”

『グッド・オーメンズ』上/下 2007年3月27日
ニール・ゲイマン&テリー・プラチェット(著)、金原瑞人&石田文子(翻訳)
角川書店刊

【内容情報】(「BOOK」データベースより)
ヨハネの黙示録に記されたハルマゲドンを実現すべく、慌て者の悪魔クロウリーがこの世を滅ぼす
ことになる赤ん坊を外交官一家に生まれた赤ん坊とすりかえた。しかし数年後、様子を見に戻って
みると…いない!クロウリーはお人好しの天使アジラフェールとともに、消えた子ども捜しに乗り
出したが…。『アナンシの血脈』で話題沸騰の天才作家ゲイマンがイギリスファンタジー界の大御
所プラチェットとともにおくる、抱腹絶倒のスラプスティック・ハルマゲドン・ストーリー。

この作品がドラマ化されるという情報があり 以前から気になっていた所 5月から放送されると
の情報が出ました。そして同時にベネディクトも出演との事で一段とネット上盛り上がっています。
ただ、ベネディクトはサタン役で実際には声のみの出演、(しかもほんのチョット)となる様で
す(残念!)

実はこの小説は読んだ事が無かったのですが、ドラマ化放送と聞き、又出演者が何とも素晴らしい
ので是非観なければッ!と思っているところですが、放送前に原作を読んでおかねば!となったの
ですが、いざ探し始めると上巻は発売されているものの下巻は現在取り扱われていないとの情報が
あり、もうこうなったら・・・と図書館を探しまくりました。 で、やっと見つけました(嬉)

そして、全く記憶喪失だったんですが、ニール・ゲイマンは”Neverwhere”の作者でもあったんですね。
教えて頂き、あらそうでしたっけ?ってな具合で久々に思い出しました。 5,6年前でしょうか、
BBCのラジオドラマで放送されていて ベネディクトが出演しているという事で少し聞いていた事を
思い出しました(この時は天使)。

全部聞いた訳ではないのですっかり忘れてしまっていたんですね。
これを機会に ”Neverwhere” も読み直そう!

又、ニール・ゲイマンの『アナンシの血脈』も大分前に読んだ記憶があるのですが、これまた忘却の
彼方で・・・(涙) なので、久々に再読。読了しました。

因みに、
”オーメン”と聞くと、映画の『オーメン』を思い出して何となく怖ろし気な印象をもってしまうので
すが、”オーメン”自体の本来の意味は”予兆”といった感じの意味なので、”good omen”というのは
「良い兆し」とか「良い兆候」といった意味を持つんですね。

で、この『グッド・オーメンズ』の概略ですが、

主な登場人物(人物?)は、
天使のアジラフェール(普段は稀覯書を扱う古書店を経営。少々ゲイっぽい)と悪魔(?)のクロウ
リー(堕天使というより 緩やかに下降気味の天使と書かれています。)
(この2人はデヴィッド・テナントとマイケル・シーンの姿を当てはめながら読みましたよ)
この2人を中心に、

へスター:堕天使、地獄の公爵
サタン:魔王
リガ―:堕天使、地獄の公爵
ベルゼブブ:サタンに次ぐ堕天使、蝿の王
反キリストの子供アダムと3人の<連中>ペッパー、ウェンズリーデール、ブライアン
(<連中>は原文では”Them”となっている様で。)

その他、
悪魔崇拝者の修道女のシスター・メアリー・オシャベリ
女予言者のアグネス・ナッター
超自然現象研究家のアナサマ・デバイス
魔女狩り軍少佐のナンジ・カンインスルナカレ・パルシファー(この名前の原文が気になって調べたら 
フツーに”Newton Pulsifer”だった。凄い翻訳だ)追記訂正:ニュートン・パルシファーは少佐の子孫
(”ナンジ・カンインスルナカレ”に関しては後日感想に書きます)
霊媒師のマダム・トレイシー
その他色々

物語りはエデンの園から始まります。
「這いまわるもの」”Crawly”という意味の名前を持ヘビであったクローリーは、一般的な名前のクロ
ウリー”Crowley”に改名。 それ以来6000年姿かたちを変え生き続けてすっかり人間社会に溶け込んで
暮らしていた。 そんな時地獄からサタンの息子の誕生とハルマゲドンの到来を告げられる。 アメリ
カ外交官の息子とサタンの息子を入れ替える指示を受けたクロウリーだが 手違いから別の子供と入れ
違ってしまった。
11年後になって初めて間違いに気づいたクロウリーは エデンの園の頃からの付き合いがある天使の
アジラフェールに手伝いを頼み”反キリスト”である子供の行方を捜し始める。

人間社会に馴染んで何とかハルマゲドンを阻止しようと奔走するクロウリーとアジラフェールのコンビ
がとても良い味をだしていて、会話がトンチンカンだったりずっこけてたり兎に角笑わされてしまうの
です。
クロウリーは常にサングラス、こよなく愛する1926年製黒いベントレー(ヴィンテージカー)。そして
車の中にはカセットテープ、クイーンの曲を愛する(フレディー・マーキューリーの名前も何度か出て
きます。これって何という奇遇でしょうね) たまに魔力をつかったりしますが、普段は何処にでもい
る様な少し軽めのおに―ちゃんの感じ(これは多少翻訳のせいもあるのかも知れませんが)

奮闘する2人の天使と悪魔を取り巻く他の堕天使たち、女預言者、オカルト研究家の女性、悪魔崇拝の
修道女、魔女狩り軍といった個性豊かな人間達が入り乱れ怒涛の展開を繰り広げます。

反キリストのアダム君は取り違えられ人間社会で育てられた為 取りあえず普通の腕白坊主に育ち、
守護者として送り込まれた地獄の番犬もフツーのワンコに成り下がってっているし、皮肉な展開は
正に諷刺マンガの様。兎に角それぞれが個性豊かで憎めないし、それぞれの会話が面白く思わずクスッ
と笑わされます。

ハルマゲドンに向かい現れる黙示録の四騎士(”死”、”戦争”、”飢餓”、”汚染”)も現代風にオートバイ
で暴走族風に現れるし、エイリアンやアトランティス人まで終末に向かい全員集合となる。
自分では意識せずに”力”を使った反キリストのアダム君やクロウリー達の辿り着いた結末は・・・・。

各巻末にある”原注”(”ニール・ゲイマンとテリー・プラチェットによる教育的かつ啓発的な注釈付き”と
ありますが)これが又参考になるんだかならないんだか。 ここで又不必要に笑わされてしまうのです。
好みは分かれるかも知れませんが、兎に角最初から最後まで怒涛の展開で 笑い所満載であっという間に
面白く読まされてしまいす。

大昔、天使の名前と階級を調べた事がありましたっけ・・・と思い出しました。
ハルマゲドンとか聖書の記述などに通じていなくても十分楽しめる”スラプスティック・エンタメ・ス
トーリー”でした。

最初にも書きましたが、現在翻訳本(下刊)が入手困難な状態の様です。
しかし、英国でもドラマ化を機にカバーをリニューアルして5月2日に再販となった様です(丁度
「パトリック・メルローズ」のドラマ放送の時と同じ様に) なかなか機を見るに敏です(笑) 
なので、日本でもこれを機に新しく文庫化にでもして再販してくれると良いんですけどね。

↓ こちらがこれまでの表紙(フツーに地味)

↓ こちらが再販になる新しい表紙


そして、ドラマ化に関する情報は次回に続けます。