知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

損害の発生があり得ないことを抗弁して、損害賠償を免れた事例

2013-03-10 20:32:03 | 特許法その他
事件番号 平成24(ワ)6892
事件名 商標権侵害差止等請求事件
裁判年月日 平成25年01月24日
裁判所名 大阪地方裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 谷有恒、裁判官 松川充康,網田圭亮

(2) 損害の発生
ア 商標権は,商標の出所識別機能を通じて商標権者の業務上の信用を保護するとともに,商品の流通秩序を維持することにより一般需要者の保護を図ることにその本質があり,特許権や実用新案権等のようにそれ自体が財産的価値を有するものではない。したがって,登録商標に類似する標章を第三者がその製造販売する商品につき商標として使用した場合であっても,当該登録商標に顧客吸引力が全く認められず,登録商標に類似する標章を使用することが第三者の商品の売上げに全く寄与していないことが明らかなときは,得べかりし利益としての実施料相当額の損害も生じていないというべきである(最高裁平成9年3月11日民集51巻3号1055頁参照)。

イ 本件で,原告又は原告子会社は,平成13年以降,大阪市内で「Cache」の名称の美容室を2店舗営んでおり,これらの店舗は,関西のヘアサロンを紹介した雑誌等を中心に広告宣伝されていたことが認められるが,これらの雑誌では同時に多数の美容室が紹介されており,原告又は原告子会社の店舗はそのうちの一つにすぎないことからすれば,本件商標が,関西圏においても他の美容室と差別化を図るほどの強い顧客吸引力を有していたとまでは認められないし,原告が,被告が営業する岐阜県岐阜市で店舗展開や営業活動をしていたとは認められず,美容室の商圏がそれほど広域には及ばないことも考え合わせれば,本件商標は,被告の営業する地域においては,一般需要者の間に知名度はなく,原告の営業としての顧客吸引力を有しないものであったといえる。
 また,被告は,その営業に被告標章2を使用していたものの,ことさら同標章を強調して広告宣伝していたような事情も見当たらず,被告の顧客は店舗周辺の住民が中心であったことからすれば,被告の売上げは被告自身の営業活動等によるものというべきであって,被告標章2の使用がこれに特に寄与したということはできない

ウ 以上認定した原告の営業の態様,被告の営業の態様,岐阜市と大阪市の距離関係等を総合すると,被告が,本件商標登録後に上記認定の限度で被告標章2を使用したことによって,原告には何らの損害も生じていないというべきであって,本件において,商標法38条3項に基づく損害賠償請求は認められない

別訴の不法行為による損害賠償は認容

最新の画像もっと見る