知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

組み合わせの動機付けと組み合わせのための改変

2008-11-30 10:28:06 | 特許法29条2項
事件番号 平成20(行ケ)10074
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年11月26日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 田中信義

(2) また,原告は,刊行物発明と刊行物2記載の技術とを組み合わせるには,刊行物1にフードテープの製造方法について示唆があり,かつ,刊行物2にフードテープの記載があることが最低限必要であるとした上,刊行物1にも刊行物2にもこれらの記載や示唆はないのであるから,刊行物発明と刊行物2記載の技術とを組み合わせる根拠は存在せず,刊行物発明のニッケル板7に対し刊行物2に記載の技術を適用することにより,相違点に係る技術事項を得ることは当業者が容易に想到し得たとする審決の判断が誤りであると主張する

 ・・・しかるところ,刊行物1の段落【0009】の記載によれば,刊行物発明の「低圧放電灯」は「蛍光ランプ」のことであると認められるから,結局,本願発明,刊行物発明及び刊行物2記載の技術は,いずれも放電灯(蛍光ランプ)に関するものであって,技術分野を共通にするものである。
 また,上記のとおり,刊行物発明の水銀ディスペンサはニッケル板7の全幅に亘ってZr-Ti-Hg合金が塗布されたものであり,刊行物2記載の板状部材は,全幅にわたってゲッター材92と水銀アマルガム材93とが設けられたものであるから,両者は,いずれも放電灯(蛍光ランプ)に用いられ,全幅にわたって水銀合金が塗布された,水銀合金を担持する部材である点で共通するものである。
 そうであれば,放電灯(蛍光ランプ)に関する技術分野の当業者が,刊行物1,2に接し,刊行物発明の水銀ディスペンサの製造方法を検討するに当たって,刊行物2に記載された板状部材の製造方法の適用を試みることには,十分な動機付けがあることは明らかである。

 そして,刊行物発明に刊行物2記載の製造方法を適用する場合には,水銀ディスペンサの材料であるニッケル板によって刊行物2記載の帯状部材に相当するものを形成し,これに水銀合金を所定幅で塗布した上,当該帯状部材を,これに塗布された水銀合金の所定幅方向を切断方向とし,かつ,その切断方向が切り出された部材の長手方向になるようにして切断する(そのように切断しなければ,切り出された部材が,刊行物1の図2c,dに図示された刊行物発明の「ニッケル板7の全幅に亘ってZr-Ti-Hg合金が塗布された水銀ディスペンサ」とならない。)ことによって,水銀ディスペンサ(ニッケル板7)を製造することになるが,その際,上記切断方向が帯状部材の長手方向に垂直な方向となるよう,帯状部材を形成すれば,同一形状のニッケル板7を効率よく製造し得ることは極めて容易に理解し得るところであり,当業者が通常採用する技術事項であると認められる。

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