知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

副引用例の引用の観点と適用の可否

2008-11-30 10:19:21 | 特許法29条2項
事件番号 平成20(行ケ)10074
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年11月26日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 田中信義

2 取消事由2(相違点についての判断の誤り)について
(1) 原告は,刊行物2に記載された発明において,水銀の量は,ランプの管の内径によって制約を受けることになるのに対し,本願発明は,水銀の放出量の制御・調整をフードテープの高さの選択によって行うものであり,高さ方向は管の長手方向となるため,ある程度の自由度があって,水銀の放出量の制御・調整を容易に行うことができるから,刊行物2記載の発明と本願発明とは基本的に相違するものであり,刊行物発明のニッケル板7に刊行物2に記載の技術を適用することにより,相違点に係る本願発明の技術事項を得ることができるとした審決の判断は誤りであると主張する

 しかしながら,審決の相違点についての判断において,刊行物2はいわゆる副引用例に当たるものであって,それに記載された発明の構成のうちの特定部分ないしそれに記載された特定の技術事項を引用し,主引用発明である刊行物発明に適用して,相違点に係る本願発明の構成ないし技術事項とすることが容易になし得るか否かが問題とされるものである。・・・審決は,板状部材の切断幅の方向を管の径方向に向けて取り付けることまで(したがって,切断幅を「蛍光ランプの管の内径に合わせて」所定幅Dとすることまで),刊行物2から引用するものではない

 そうすると,刊行物2に記載された発明自体において,所定幅Dに依存する水銀の量がランプの管の内径によって制約を受けることになるからといって,そのことが,刊行物2に記載された上記技術を刊行物発明のニッケル板7に適用して相違点に係る本願発明の技術事項を得ることにつき,何ら妨げとならないことは明らかであり,原告の上記主張を採用することはできない。

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