知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

設計事項の判断事例-課題解決のための具体的手段における実質的な差異

2008-09-11 06:48:05 | 特許法29条2項
事件番号 平成19(行ケ)10282
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年08月28日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟

3 本願発明と引用発明の構成の相違は設計上の微差にすぎないとした相違点の判断の誤り(取消事由3)について

(1) ア 甲2,3,甲8の1,2及び弁論の全趣旨によれば,2つの剛性フレームを相対回動可能に結合するために金属クラウンを用いることは,本願発明及び引用発明と同じ,乗り物シート用ピボット機構の技術分野に属する周知技術又は慣用技術であることが認められる。

イ 前記2(1)のとおり,本願発明は,ピボット機構の強度を上げることを目的としているが,ばねの構成によりその目的を実現しようとするものである。前記2(3)のとおり,本願発明が,金属クラウンによって第1及び第2の剛性フレームが実質的にその全周にわたって面外方向に相互に拘束されるものであり,そのような構成を採ることにより,引用例構成のように片持ち梁状態で支持するよりも強度が増加し互いに離間しにくくなるとの効果が得られたとしても,その効果は,周知技術を適用したことにより必然的に得られる効果にすぎず,本願発明により新たに得られた作用効果ということはできない
 したがって,本願発明において,金属クラウンを使用したことによってピボット機構の強度が増加し互いに離間しにくくなるとの効果が得られたとしても,その点をもって,本願発明と引用発明との間の,課題解決のための具体的手段における実質的な差異であるとはいえない

ウ 前記アのとおり,2つの剛性フレームを相対回動可能に結合するために金属クラウンを用いることは,乗り物シート用ピボット機構の技術分野に属する周知技術又は慣用技術である。

 そして,引用例構成は,2つの剛性フレームを相互に回動可能に結合することを実現する手段であり,他方,本願発明における金属クラウンを使用する構成も,2つの剛性フレームを相互に回動可能に結合することを実現する手段である。
 そうすると,2つの剛性フレームを相互に回動可能に結合することを実現するために,引用例構成を,周知技術である金属クラウンを使用する構成とすることは,当業者が普通に採用すると認められる程度の技術的手段の一態様であり,課題を解決する手段を具体化するに当たっての設計的事項にすぎない

エ したがって,本願発明と引用発明は実質的に同一と認められ,審決の相違点の判断に誤りがあるとは認められない

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