知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

請求項に積極的な特定のない事項の認定事例

2008-10-04 16:53:29 | 特許法29条2項
事件番号 平成19(行ケ)10311
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年09月29日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 田中信義

4 取消事由3(相違点の看過)について
 原告は,本願発明においては,ファンネルのシール部の厚さは変化せず一定であるのに対し,引用発明においては,ガラスファンネルの肉厚は場所により変化しており,本願発明と引用発明との間には,ファンネルの幅の変化に関して相違点があるにも拘わらず,審決はこの相違点を看過したと主張し,本願発明のファンネルのシール部の厚さが一定であることの根拠として,①特許請求の範囲の請求項1において,パネル側壁シール部の幅の変化の記載はあるが,ファンネルの幅の変化の記載はないこと,②本願明細書には「本発明による新しい管では,従って,図6に示されるように,パネルのシール部はパネルの辺L及びSに沿って最も広く,図7に示されるように,パネルの隅において最も狭い。」(段落【0008】)と記載され,ファンネルの幅は,パネルの辺L及びSに対応する箇所(図6)においても,パネルの隅に対応する箇所(図7)においても同じであること,を挙げている

 しかしながら,本願明細書にはファンネルのシール部の幅が一定でないものを本願発明から除外するような記載はなく,特許請求の範囲の請求項1においてファンネルのシール部の厚さが特定されていない以上,本願発明は,ファンネルの幅が一定であるもの及び一定でないものの両方を含むものと解するのが相当であり,上記①,②の点はいずれもこの認定を左右するに足りるものではない。

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