知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

審判段階での周知例の提示を認めた事例

2008-10-04 17:18:35 | 特許法29条2項
事件番号 平成20(行ケ)10114
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年09月29日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

5 取消事由4(審判手続の法令違反)について
(1) 原告は,審決が,甲2に基づき
「・・・」を周知技術1として(6頁5行~7行),
「・・・」を周知技術2として(6頁23行~26行),
「・・・」を周知技術3として(6頁末行~7頁2行),
それぞれ認定し,これにより,相違点2に係る本願補正発明の構成を引用発明に採用することは当業者が容易に想到し得るものであると判断し,本願発明についても同様の理由で当業者が容易に発明をすることができたものであるとしたところ,拒絶理由通知や拒絶査定においては,甲2及びそのような周知技術の内容については何ら言及されていないから,改正前特許法159条2項で準用する同法50条の規定に反する違法があると主張する


( 2)ア拒絶理由通知書(平成15年11月27日付け,甲4)によれば,・・・,請求項1についての備考欄には「BB遊技は周知であり,組み合わせることは容易である」と記載し,請求項2-4の備考欄には「遊技状況を遊技者に報知することは従来より行われていること(例えば文献4〔判決注:本訴甲11〕)で,必要に応じて適宜なし得ることである」と記載した。

 なお,原告はその後提出した意見書(平成16年1月28日付け,甲5)において,「確かに,BB遊技は周知の技術です。」として,BB遊技が周知であることを認めている(3頁29行~30行)。

イ 一方,拒絶査定(・・・)では,本件出願にかかる発明(・・・)につき拒絶理由通知書(甲4)の拒絶理由1,2により拒絶すべきものであるとし,備考として「遊技状態としてどのようなものを設けるか(BB,CTなど),そしてどのように各ゲームに移行するのかは,『ゲームのルール』である。ゲームのルールは適宜決定すればよいことであって,技術的進歩性とは無関係である。そして,本願請求項の効果も遊技上の効果でしかない。」とした。

ウ 上記ア,イによれば,拒絶査定において,特許庁審査官は本件出願に係る発明と引用発明との間の「遊技状態(BB,CT)」及び「各ゲームに移行する条件」に係る相違点については,いずれも当業者において適宜決定し得ることであると判断したものと認められる

エ そうすると,上記拒絶査定における
①「遊技状態としてどのようなものを設けるか(BB,CTなど)」については,審決の認定した相違点1(・・・)に係るものであり,また同じく
②「各ゲームに移行する条件」とは,審決の認定した相違点2(・・・)に係るものであり,審決は,この相違点1,2につき,甲2に記載された周知技術に基づいて容易に想到し得ると判断したものである。

 上記の検討によれば,拒絶査定において示された理由と審決が示した理由とでは実質的に異なる点はないというべきである。

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