知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

二つの実施例に渡る引用発明の認定と引用発明の一般化

2012-11-04 10:06:03 | 特許法29条2項
事件番号 平成24(行ケ)10063
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年10月29日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 真辺朋子,田邉実
特許法29条2項 

 審決は,・・・と引用発明2を認定したが,このうち前半部分・・・の部分は,引用例2の2つの実施例,すなわち生理用ナプキンと失禁処理パッドの実施例のうち後者の実施例に関する記載部分に概ね対応し,後半部分の・・・との部分は,・・・,上記後半部分は引用例2の実施例のうち生理用ナプキンの実施例に概ね対応する。そうすると,審決は,引用例2の2つの実施例にまたがって引用発明2を認定したものであり,原告はこの点を捉えて審決の引用発明の認定を非難する

 ところで,引用例2の生理用ナプキンの実施例も,失禁処理パッドの実施例も,・・・という引用例2記載の発明の目的を達成するために考案されたもので・・・,外皮材やフランジ等の形状,構造はかかる目的を達成するための手段であるところ,段落【0022】には,・・・との記載があるから,引用例2においては,吸収体5の皿状外皮材1への固定方法として,表面シート6で包まれた吸収体(吸収材)5を外皮材1の底部に接着するか(生理用ナプキンの実施例),外皮材1の前面に吸収体5を張り付けた上で,その上方からフランジ4で覆って,吸収体5を外皮材1とフランジ4の間の空間に閉じ込めるか(失禁処理パッドの実施例)は,任意に選択可能な事柄と位置付けられていることが明らかである。

 そうすると,両実施例の間で排泄物の漏れ出しの防止方法に差異があるとしても(・・・),引用例2に接した当業者であれば,吸収体5の皿状外皮材1への固定方法を置き換えた構成を読み取ることができるというべきであるから,審決が前記のとおりに引用発明2を認定した手法に誤りがあるとはいえない

 そして,鼻汁も人体が分泌する体液の一つであるから,引用発明2と本願発明とは「体液吸収製品」である点で一致するところ,両発明を「体液吸収製品」との技術概念で包括したとしても過度の一般化であるとはいえない
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【請求項1(本願発明)】
 液透過性の表面シート,高吸水性の中間シート,及び液不透過性の裏面シートからなる積層構造を有し,周縁端部が接合され,かつ長手方向中央部に折り曲げ案内部を有する,繰り返し使用するための,水様の鼻汁吸収用ナプキン。

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