知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

周知技術の引用が特許法50条に反するとした事例

2009-09-20 10:01:53 | 特許法29条2項
事件番号 平成20(行ケ)10433
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成21年09月16日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塚原朋一

ウ さらに,審決は,拒絶理由通知においてなんら摘示されなかった公知技術(周知例1及び2)を用い,単にそれが周知技術であるという理由だけで,拒絶理由を構成していなくとも,特許法29条1,2項にいういわゆる引用発明の一つになり得るものと解しているかのようである。

 すなわち,審決は,相違点1について,・・・,相違点1に係る本願発明の発明特定事項は周知である。」と説示し,また,相違点2についても,・・・,相違点2に係る本願発明のように時間及び深さを決定することは,周知例1及び周知例3の周知技術2を勘案すれば,適宜なし得る設計的事項に過ぎないものである。」,そして,「本願発明は,引用発明,周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明することができたものである」という説示をしているが,誤りである。

 被告主張のように周知技術1及び2が著名な発明として周知であるとしても,周知技術であるというだけで,拒絶理由に摘示されていなくとも,同法29条1,2項の引用発明として用いることができるといえないことは,同法29条1,2項及び50条の解釈上明らかである。

 確かに,拒絶理由に摘示されていない周知技術であっても,例外的に同法29条2項の容易想到性の認定判断の中で許容されることがあるが,それは,拒絶理由を構成する引用発明の認定上の微修整や,容易性の判断の過程で補助的に用いる場合,ないし関係する技術分野で周知性が高く技術の理解の上で当然又は暗黙の前提となる知識として用いる場合に限られるのであって,周知技術でありさえすれば,拒絶理由に摘示されていなくても当然に引用できるわけではない。

 被告の主張する周知技術は,著名であり,多くの関係者に知れ渡っていることが想像されるが,本件の容易想到性の認定判断の手続で重要な役割を果たすものであることにかんがみれば,単なる引用発明の認定上の微修整,容易想到性の判断の過程で補助的に用いる場合ないし当然又は暗黙の前提となる知識として用いる場合にあたるということはできないから,本件において,容易想到性を肯定する判断要素になり得るということはできない。
・・・

エ 以上により,審決には,上述のいずれについても,特許法159条2項で準用する同法50条に反する違法がある。

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