知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

特許請求の範囲の用語の解釈事例-定義のない用語を一般の意味に解した事例-

2009-09-13 12:04:56 | Weblog
事件番号 平成20(行ケ)10479
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成21年09月08日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣

3 取消事由3(相違点の認定の誤り)について
(1) 原告は,本願発明は,スライド側コアとスライド側凹部とは,共に1面のスライド金型に形成されているのに対し,引用発明1の金型は,第1の固定金型と第2の固定金型が可動板に取り付けられているにすぎず,第1の固定金型に形成されている凸部と第2の固定金型に形成されている凸部とは1面の金型には形成されていないと主張する

(2) しかしながら,まず,本願明細書の特許請求の範囲には,「1面の」の意味について,何ら特定がないし,発明の詳細な説明にもその記載はない

(3) この点について,原告は,審査段階で「1面の」の構成を付加する手続補正をするのと同時に特許庁に提出した意見書(甲11)において,以下の記載をしていた。

ア 本願発明のスライド金型は,1面からなっている。・・・,この引用例1の固定金型は2面からなっている。したがって,イニシアルコストは高くなり,多品種・少量生産用の金型には適していない。また,面数が多くなり保守・点検のコストも嵩むと思われる。(2頁38~45行)。

イ ・・・。

(4) 原告の上記意見書の記載は,「1面の」について一体形成されるものであることを前提とするとも解されるが,「面」とは一般的に「物の外郭を成す,角だっていないひろがり。その類似物。」(広辞苑第六版)を意味すると解されるから,このような解釈を超えて本願発明の「1面の」が一体形成という意味を有すると解することはできない

(5) そして,引用発明1の第1の固定金型と第2の固定金型にはそれぞれ凸部が形成されているところ,当該凸部が形成されている面は同一面上に位置していることは,引用例1の3~5図の記載から明らかである。そうすると,引用発明1は,1つの面すなわち1面に各凸部が形成されたものとみることができるのであるから,本件審決の認定に誤りは認められない

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