事件番号 平成17(行ケ)10506
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年02月21日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官飯村敏明
『3 取消事由2〔特定OH基割合の数値の意義との関係〕について
原告は,本件特許の特許請求の範囲に記載されている特定OH基割合の数値(0.36以下)には,技術的観点からみて意味がなく,同数値は,キセノンエキシマ光の照射量と共に時間的に変化する特定OH基割合の数値に着目して,単にこれらの数値のうちから,適宜1つの数値を選択しただけにすぎないものであるから,本件発明に困難性はないと主張する。
(1) 本件明細書(甲2)の記載
・・・
(2) 判断
本件明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2においては,放出される光の波長について何ら記載がない。
また,発明の詳細な説明欄には,本件発明において,特定OH基の割合を特定するに当たり,透過率をみる波長として図4に示される160 nm に着目することに何らかの意義があることを示した記載を見いだすことはできないし,160 nm 以外の波長について,特定OH基の割合を低下させれば,図4記載のように透過率が大きくなるとする根拠を見いだすこともできない。
そうすると,特定OH基の割合を低下させれば波長160 nm の真空紫外光の透過率が大きくなる関係が理解されるにしても,本件明細書の記載上放出される光の波長について何ら特定されない本件発明において,波長160nm の真空紫外光の透過率が大きくなることによって,格別の技術的意義が生じるものと認めることはできない。
イ 仮にXe を放電ガスとして中心波長172nm のエキシマ光を得るエキシマランプについて,本件明細書の図4に示されるような,特定OH基の割合の相違に基づく透過率の相違が生ずるとしても,次のとおり,特定OH基の割合を0.36以下とする点に格別の技術的意義があるとは認められない。
・・・
上記表の数値は,甲4の図3及び図7から読み取ったデータに基づくものであるので,数値自体厳密に正確なものとはいえず,また,ガラスの厚みにより要する時間の多少はあるにせよ,上記表によれば,特定OH基を含む石英ガラスにXe 誘電体バリア放電ランプを照射すれば,使用当初の特定OH基の割合が0.36以上であっても,相応の時間(数十時間程度)が経過すると,0.36以下になることは推測に難くないものと認められる。
(ウ) 本件発明1は,放電容器が石英ガラスからなる誘電体バリア放電ランプ,本件発明2は,誘電体バリア放電ランプからの紫外線を取り出す窓部材石英ガラスよりなる照射装置であるから,Xe を放電ガスとしてこれらを使用すれば,いずれにおいても,石英ガラスがXe 誘電体バリア放電ランプからの紫外線を照射されることになる。
そうすると,誘電体バリア放電ランプの寿命が約1000時間とされる(甲8,29頁右欄「3.3 寿命」の欄)ところ,使用当初の特定OH基の割合が0.36以上か否かにかかわらず,数10時間程度の照射で0.36以下という本件発明1の要件を満たすことになるので,
本件発明を特定するに当たり,特定OH基の割合を0.36以下と規定したことは,使用につれて変化する特定OH基の割合について,単に,使用中のある時点(寿命と対比して,使用開始から相当短い時点)の数値を特定したにすぎないことになり,真空紫外光の石英ガラス自身による吸収を良好に抑えるとともに紫外線照射によるダメージを軽減することができるといった,本件明細書記載の格別の技術的意義を生ずるような特定とはいえず,単なる設計的事項以上のものということはできない。』
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年02月21日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官飯村敏明
『3 取消事由2〔特定OH基割合の数値の意義との関係〕について
原告は,本件特許の特許請求の範囲に記載されている特定OH基割合の数値(0.36以下)には,技術的観点からみて意味がなく,同数値は,キセノンエキシマ光の照射量と共に時間的に変化する特定OH基割合の数値に着目して,単にこれらの数値のうちから,適宜1つの数値を選択しただけにすぎないものであるから,本件発明に困難性はないと主張する。
(1) 本件明細書(甲2)の記載
・・・
(2) 判断
本件明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2においては,放出される光の波長について何ら記載がない。
また,発明の詳細な説明欄には,本件発明において,特定OH基の割合を特定するに当たり,透過率をみる波長として図4に示される160 nm に着目することに何らかの意義があることを示した記載を見いだすことはできないし,160 nm 以外の波長について,特定OH基の割合を低下させれば,図4記載のように透過率が大きくなるとする根拠を見いだすこともできない。
そうすると,特定OH基の割合を低下させれば波長160 nm の真空紫外光の透過率が大きくなる関係が理解されるにしても,本件明細書の記載上放出される光の波長について何ら特定されない本件発明において,波長160nm の真空紫外光の透過率が大きくなることによって,格別の技術的意義が生じるものと認めることはできない。
イ 仮にXe を放電ガスとして中心波長172nm のエキシマ光を得るエキシマランプについて,本件明細書の図4に示されるような,特定OH基の割合の相違に基づく透過率の相違が生ずるとしても,次のとおり,特定OH基の割合を0.36以下とする点に格別の技術的意義があるとは認められない。
・・・
上記表の数値は,甲4の図3及び図7から読み取ったデータに基づくものであるので,数値自体厳密に正確なものとはいえず,また,ガラスの厚みにより要する時間の多少はあるにせよ,上記表によれば,特定OH基を含む石英ガラスにXe 誘電体バリア放電ランプを照射すれば,使用当初の特定OH基の割合が0.36以上であっても,相応の時間(数十時間程度)が経過すると,0.36以下になることは推測に難くないものと認められる。
(ウ) 本件発明1は,放電容器が石英ガラスからなる誘電体バリア放電ランプ,本件発明2は,誘電体バリア放電ランプからの紫外線を取り出す窓部材石英ガラスよりなる照射装置であるから,Xe を放電ガスとしてこれらを使用すれば,いずれにおいても,石英ガラスがXe 誘電体バリア放電ランプからの紫外線を照射されることになる。
そうすると,誘電体バリア放電ランプの寿命が約1000時間とされる(甲8,29頁右欄「3.3 寿命」の欄)ところ,使用当初の特定OH基の割合が0.36以上か否かにかかわらず,数10時間程度の照射で0.36以下という本件発明1の要件を満たすことになるので,
本件発明を特定するに当たり,特定OH基の割合を0.36以下と規定したことは,使用につれて変化する特定OH基の割合について,単に,使用中のある時点(寿命と対比して,使用開始から相当短い時点)の数値を特定したにすぎないことになり,真空紫外光の石英ガラス自身による吸収を良好に抑えるとともに紫外線照射によるダメージを軽減することができるといった,本件明細書記載の格別の技術的意義を生ずるような特定とはいえず,単なる設計的事項以上のものということはできない。』