知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

時機に遅れた攻撃防御

2008-07-27 12:24:29 | 特許法104条の3
事件番号 平成19(ワ)6485
事件名 実用新案権侵害差止等請求事件
裁判年月日 平成20年07月22日
裁判所名 大阪地方裁判所
権利種別 実用新案権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 田中俊次

(5) 乙第21号証を副引例とする進歩性欠如の主張が時機に後れたものといえるか否かについて

ア 原告は,被告が侵害論の審理が終了した後に初めて乙第6号証又は乙第7号証を主引例とし,乙第21号証を副引例とする進歩性欠如の主張をし,同証拠を提出したことが,時機に後れた攻撃防御方法(民訴法157条1項)である旨主張した
 当裁判所は,上記攻撃防御方法は被告が故意又は重大な過失により時機に後れて提出したものではないと判断するものであるが,以下にその理由を付言する。

イ 本件審理の経過は次のとおりである。
・・・

ウ 上記のとおり,被告は,第1回口頭弁論期日において,進歩性の欠如等を理由とする無効主張を平成19年9月28日までに行う旨を述べながら,無効理由の整理が不十分なため期日を重ね,その整理のためにその後約4か月を要し,平成20年1月31日の期日において漸くそれまでに主張した無効理由の整理が完了し,同期日において侵害論の審理を終了して,次回以降損害論の審理を行うべく当事者双方の準備事項を取り決めたにもかかわらず,被告は,その後の同年3月24日の期日に至って初めて,乙第6号証又は乙第7号証を主引例とし,乙第21号証を副引例とする進歩性欠如の主張をし,同証拠を提出するに至ったものであって,当初の予定からすると約半年遅れた攻撃防御方法の提出というべきであり,客観的には時機に後れたものと評価されてもやむを得ないものというほかない

 しかし,新たに副引例として追加主張した乙第21号証は,フランス語で記載されたフランス国特許の特許公報であり,検索に際してキーワードを選択するについても言語上の問題があり,我が国の特許・実用新案のようにその検索自体が必ずしも容易に行い得るものではない。また,検索の結果,引例の候補となり得る資料を入手したとしても,その資料が引例として適切なものであるか否かはこれを翻訳して改めて吟味する必要があるところ,フランス語の翻訳のために相応の時間を要するのもある程度やむを得ないものといえる。

 このような事情に照らすと,被告が,上記時機において乙第21号証を副引例とする主張及び証拠を追加提出したことについては,故意はもとより重大な過失があるとまでは認められない。

 よって,被告の上記攻撃防御方法の提出について,当裁判所は,これを却下すべきものではないと判断した次第である。

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