知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

著作権法2条1項1号の「創作的に表現したもの」とは

2011-12-04 19:44:52 | 著作権法
事件番号 平成22(ワ)28962
裁判年月日 平成23年11月29日
裁判所名 東京地方裁判所  
裁判長裁判官 大鷹一郎

 著作権法上の保護の対象となる著作物は,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)であり,ここでいう「創作的」に表現したものといえるためには,厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではなく,作者の個性が表現されたもので足りるというべきである。
 ・・・
(ア) 本件画像1について
 本件画像1は,本件CTデータからコンピュータソフトウェアの機能により自動的に生成される本件三次元再構築モデルとは異なり,本件CTデータを素材としながらも,半透明にした本件マンモスの頭部の三次元画像の中に,本件マンモスの水平断面像を並べて配置する構成としている点において,美術的又は学術的観点からの作者の個性が表現されいるものということができる。
 加えて,本件画像1では,・・・,様々な表現の可能性があり得る中で,美術的又は学術的な観点に基づく特定の選択が行われて,その選択に従った表現が行われているのであり,これらを総合した成果物である本件画像1の中に作者の個性が表現されていることを認めることができる。
・・・
(イ) 本件画像2について
 本件画像2は,本件三次元再構築モデルを特定の切断面において切断した画像それ自体とは異なり,2枚の同じ切断画像を素材とし,一方には体表面に当たる部分に茶色の彩色を施し,他方には赤,青,黄の原色によるグラデーションの彩色を施した上で,後者の頭部断面部分のみを切り抜いて前者と合成することによって一つの画像を構成している点において,美術的又は学術的観点からの作者の個性が表現されているものということができる。
・・・
(ウ) 被告の主張について
 これに対し被告は,本件各画像における上記の各点について,いずれもありふれた表現方法や画像を見やすくするための技術的調整等にすぎず,本件各画像に創作性を認める根拠とはならない旨を主張する。
しかしながら,被告の主張は,要するに,本件各画像における表現の要素を個別に取り上げて,それぞれが独創性のある表現とまではいえない旨を述べているものにすぎないものであり,前述のとおり,著作物としての創作性が認められるためには,必ずしも表現の独創性が求められるものではなく,作者の個性が表現されていれば足りるのであり,本件各画像にそのような意味での創作性が認められることは,上記(ア)及び(イ)で述べたとおりであるから,被告の上記主張は採用することができない。

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