知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

追試による引用例の認定

2007-03-16 07:06:07 | 特許法29条2項
事件番号 平成17(ワ)19162
事件名 特許権侵害差止請求事件
裁判年月日 平成19年03月13日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 高部眞規子

『(エ) 結局,原告側の追試のうち,少なくとも原告追試bは,引用実施例16の実験工程を忠実に再現したものと評価することができる。そして,原告追試bにおいては,前記(イ)のとおり,セフジニルの無晶形のみが得られ,A型結晶が得られなかったものである。そうすると,引用実施例16の実験工程を追試したときに,セフジニルのA型結晶が得られるということはできない。
オ 小括
前記エのとおり,被告側の追試によっては引用実施例16の実験工程を忠実に再現してもセフジニルのA型結晶を得ることはできず,かえって原告側の追試によれば,セフジニルの無晶形のみが得られることが示されたものである。
よって,本件特許権の優先権主張日当時の技術常識を参酌すると,当業者において上記実施例の記載を追試してもセフジニルのA型結晶を製造することはできず,したがって,上記実施例においては,当業者において容易に実施し得る程度にセフジニルのA型結晶の製造方法が開示されているとはいえない。
そうすると,本件特許発明は,その優先権主張日前に頒布された刊行物中の引用実施例16の記載内容から容易に実施することができるとはいえず,そのことを理由とする新規性欠如の主張は,理由がない。

(4) まとめ
以上のとおり,引用実施例14及び16のセフジニルがA型結晶のものであるとはいえないし,引用実施例16の記載内容を当業者において追試すると同A型結晶を得ることができるともいえないから,被告の新規性欠如を理由とする本件特許の無効主張はいずれも理由がない。』

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