知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

法36条5項2号の判断事例

2011-08-07 18:25:34 | 特許法36条6項
事件番号 平成22(行ケ)10372
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成23年07月20日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

(イ) 原告の主張に対する判断
 原告は,法36条5項2号に基づけば,本来,特許請求の範囲には特許を受けるべき発明の構成に欠くことができない事項のすべてを記載すべきであるところ,本件発明1においては「中空に一体成形されたプラスチック板体1に流動体Wを給入および排出可能な給排口2を内空部に連通して形成する」ことが特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項であることが明らかであるのに,本件特許の請求項1には,発明の詳細な説明に繰り返し記載されている「流動体Wを給入および排出可能な給排口2」という最も重要な構成要件が欠けているから,法36条5項2号の要件を満たしていない旨主張する。

 しかし,本件明細書の全体の記載を考慮すれば,本件特許における技術的課題である前記①ないし③の各課題は,それらの課題が発明の完成のために全て必須であるというものではなく,①ないし③の課題それぞれに対応した課題解決のための手段が記載され,それぞれの手段に対応した発明の効果が別個に記載されているから,そのうちの前記②の課題解決のための手段が記載されていないとしても,請求項の記載が他の課題を解決する手段とそれに対応する効果を奏するような構成になっている限り,「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項」が記載されているというべきであるから,原告の上記主張は採用することができない。

<判決注> 平成6年法律第116号による改正前の特許法36条・・・の規定は,次のとおりである。
法36条(特許出願)
 ・・・
5項: 第3項第4号の特許請求の範囲の記載は,次の各号に適合するものでなければならない。
1 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。
2 特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した項(以下「請求項」という。)に区分してあること。

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