知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

特許法153条2項の趣旨

2012-07-14 08:31:45 | 特許法その他
事件番号 平成23(行ケ)10313
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年07月04日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣
特許法153条2項

ウ 特許法153条2項は,審判において当事者が申し立てない理由について審理したときは,審判長は,その審理の結果を当事者に通知し,相当の期間を指定して,意見を申し立てる機会を与えなければならないと規定している。これは,当事者の知らない間に不利な資料が集められて,何ら弁明の機会を与えられないうちに心証が形成されるという不利益から当事者を救済するための手続を定めたものである。

 したがって,特許法153条2項にいう「当事者の申し立てない理由」とは,新たな無効理由の根拠法条の追加や主要事実又は引用例の追加等,不利な結論を受ける当事者にとって不意打ちとなりあらかじめ通知を受けて意見を述べる機会を与えなければ著しく不公平となるような重大な理由をいうものであって,特定の引用例に基づいて当該発明が容易に想到できるか否かの判断の過程における一致点や相違点の認定は,上記「当事者の申し立てない理由」には当たらないと解される。

 よって,審決における特定の引用例との一致点や相違点の認定が,審判手続における当事者の主張するそれと異なっていたとしても,そのことをもって直ちに同項に違反するものとはいえない。また,特許無効審判の判断の過程において,当事者の一致点や相違点に係る主張に拘束されるものではない。

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