明日21日夜10時からBSプレミアムで「原田芳雄さんをしのんで 広島発ドラマ 火の魚」が放送される。これは一昨年、NHK広島放送局が制作し、文化庁芸術祭大賞など国内外で数々の賞を受賞した名作ドラマだ。
瀬戸内海に浮かぶ大崎下島に、世間から取り残されたように暮らす孤独な老作家・村田(原田芳雄)と、若い女性編集者・折見(尾野真千子)とが衝突を繰り返しながら、心が通い合うようになる。しかし折見に残された時間は少なかった。折見を東京の病院に見舞った村田が島に帰る船の上でのラストシーンのセリフ(モノローグ)がこれだ。
―― 折見!
―― お前が持って生まれ、そしてお前なりに守り通すであろうその命の長さに俺が何の文句をつけられよう
―― たとえ短くとも、俺はお前を哀れまない。心配するな。俺とて後に続くのにそんなに時間はかからんさ
―― 煙草、吸いてえな
―― だがそれでももし叶うなら、今生、どこかでまた会おうな
僕は若い頃、原田芳雄という俳優をあまり好きではなかった。だから彼の代表作と言われる「竜馬暗殺(1974)」や「ツィゴイネルワイゼン(1980)」などは見ていない。しかし、テレビドラマ「裏切りの明日(1975)」などを見て、とても才能豊かな役者であることは知っていた。彼は若い頃はその豊かな才能ゆえかトンがった印象があったからだ。しかし、そんな印象が変わってきたのは故黒木和雄監督の戦争レクイエム三部作あたりからである。そして晩年の「オリヲン座からの招待状(2007)」や上述のドラマ「火の魚」など、最近では最も敬愛する俳優さんになった。これほど僕自身の中で評価が変わった俳優さんは他にいない。
謹んでご冥福を祈る。合掌。
瀬戸内海に浮かぶ大崎下島に、世間から取り残されたように暮らす孤独な老作家・村田(原田芳雄)と、若い女性編集者・折見(尾野真千子)とが衝突を繰り返しながら、心が通い合うようになる。しかし折見に残された時間は少なかった。折見を東京の病院に見舞った村田が島に帰る船の上でのラストシーンのセリフ(モノローグ)がこれだ。
―― 折見!
―― お前が持って生まれ、そしてお前なりに守り通すであろうその命の長さに俺が何の文句をつけられよう
―― たとえ短くとも、俺はお前を哀れまない。心配するな。俺とて後に続くのにそんなに時間はかからんさ
―― 煙草、吸いてえな
―― だがそれでももし叶うなら、今生、どこかでまた会おうな
(脚本:渡辺あや)
僕は若い頃、原田芳雄という俳優をあまり好きではなかった。だから彼の代表作と言われる「竜馬暗殺(1974)」や「ツィゴイネルワイゼン(1980)」などは見ていない。しかし、テレビドラマ「裏切りの明日(1975)」などを見て、とても才能豊かな役者であることは知っていた。彼は若い頃はその豊かな才能ゆえかトンがった印象があったからだ。しかし、そんな印象が変わってきたのは故黒木和雄監督の戦争レクイエム三部作あたりからである。そして晩年の「オリヲン座からの招待状(2007)」や上述のドラマ「火の魚」など、最近では最も敬愛する俳優さんになった。これほど僕自身の中で評価が変わった俳優さんは他にいない。
謹んでご冥福を祈る。合掌。