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国策映画「能 葵上」

2020-12-15 16:57:00 | 伝統芸能
 昭和10年、野上豊一郎監修による能楽映画「葵上」。鉄道省観光客局が日本の文化を海外に宣伝するための国策映画で、初めての能のトーキー映画。英語・ドイツ語・フランス語版が作られた。
 シテを務めたのは金春流・櫻間金太郎(後の弓川)。明治期の肥後能楽の名人・櫻間伴馬の子。ワキは下掛寶生流の寶生新。夏目漱石に謡の指導をしたことでも知られる。他にもアイ狂言や小鼓など、後の人間国宝が5人もいる。
 撮影した能舞台はPCL(東宝映画の前身)のスタジオに、麹町富士見町の細川家の能舞台を模して組み立てられたもの。
 野上豊一郎は大分県臼杵市出身の英文学者、能楽研究者。東京帝大時代に夏目漱石に師事した。能楽の研究や英文学の翻訳など著書は数多い。国内唯一の能楽に関する総合的な研究機関である野上記念法政大学能楽研究所の母体を作った。妻は小説家の野上弥生子。

シ  テ(六條御息所)櫻間金太郎(金 春 流)
ワ  キ(横河の小聖)寶生  新(下掛寶生流)
シテヅレ(巫   女)櫻間 龍馬(金 春 流)
ワキヅレ(大   臣)光本 彌一(下掛寶生流)
ア  ヒ(下   人)山本東次郎(大 蔵 流)
笛          一噌又六郎(一 噌 流)
小  鼓       幸  伍朗(幸   流)
大  鼓       川崎 利吉(葛 野 流)
太  鼓       金春惣右衛門( 金 春 流)
地  頭       金春栄治郎(金 春 流)


【あらすじ】
 光源氏の正妻である葵上は、執拗な物怪(もののけ)に悩まされ、病の床にふせっていました。そこで、朱雀院(すざくいん)に仕える臣下が、照日の巫女を左大臣邸に招き、物怪の正体を占わせます。巫女が弾く梓弓(あずさゆみ)[霊魂を呼び出すのに用いる弓]の音に引かれて、六条御息所の生霊が現れ、皇太子妃だった花やかな昔に比べ、源氏との仲が遠ざかり、顧みる人もいなくなった今の境遇を嘆きます。そして、賀茂の祭に先立つ斎院御禊(さいいんごけい)の日の「車争い」で、葵上一行に辱めを受けて以来、抑えることのできなくなった、尽きせぬ恨みや嫉妬を告白します。ついには、高ぶる感情を抑えきれず葵上を激しく打ち据え、破れ車(やれぐるま)[車争いで壊された車]に乗せてあの世へ連れ去ろうといって姿を消します。葵上の容態の急変に比叡山(ひえいざん)横川の行者が呼ばれ、祈祷(きとう)を始めると、嫉妬と恨みのあまり鬼相となった六条御息所の生霊が再び姿を現します。生霊は行者の法力と激しく戦いますが、御仏の声に祈り伏せられ、ついには悪心を捨て、成仏する身となります。(文化デジタルライブラリーより)
※右の絵は六条御息所の生霊を描いた上村松園の「焔」


※2016年12月22日の記事を再編集し、再掲したものです。


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