徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

牛深ハイヤ節にまつわる話(2)

2023-04-13 22:29:42 | 伝統芸能
 3月25日にNHK九州・沖縄で放送された「キミだけ応援団」で紹介された「牛深ハイヤ」を伝承する牛深高校郷土芸能部の活動をこのブログで取り上げた。番組の中で、高校生を指導する牛深ハイヤ保存会のメンバーが歌詞の意味を教える場面があった。それは
「お前さんに暇状(ひまじょう)はやいもせんが取いもせん」という長囃子の一部だった。これは「あなたに離縁状をやりもしないし、もらいもしない」という意味だと説明していた。意味はわかるのだが、どういう状況なのかの説明はなかった。
 この長囃子には「権現山から後ろ飛びゃするとも」という前段がある。天草の久玉町と魚貫町にまたがる権現山という400㍍くらいの山がある。その山の断崖から飛び降りるという意味。「清水の舞台から後ろ飛び」がもとになったと思われるが、重大な決意をもって行動を起こす時の常套句だ。わが熊本にも「ええもさいさい 百間石垣後ろ飛び」という追い詰められた盗賊が熊本城の百間石垣から飛び降りたという伝説が残っている。この「後ろ飛び」と言うのは、飛込競技で言う「後ろ飛び」ではなく、飛び降りることを大げさに表現したものらしい。
 つまり、「エーサ 権現山から後ろ飛びゃするとも お前さんに暇状はやいもせんが取いもせん」という長囃子は「どんな困難があろうとあなたのことを見捨てませんよ」という意味の比喩表現だと思われる。
 そんな表現が使われる背景は、昭和2年に出版された民俗学者・宮武省三のルポ「習俗雑記~牛深女とその俗謡について」に書かれており、このブログに転載したことがあるので、興味のある方はぜひご一読いただければ幸いである。

 牛深女とその俗謡について(1)2012.7.7
 牛深女とその俗謡について(2)2012.7.11


牛深港

   6´20″から次の歌詞が歌われます。
ハイヤエー沖の 瀬の瀬にドンと打つ波はエー あれは船頭さんの サーマ 度胸さだめヨー
エーサ 権現山から後ろ飛びゃするともお前さんに暇状はやいもせんが取いもせん


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