徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

古泉の宿とハーンの夢

2023-05-24 20:50:55 | 音楽芸能
 ラフカディオ・ハーンが熊本の五高教師時代に書いたといわれる「知られぬ日本の面影」を読んでいると、後半の「日本海に沿うて」の章に鳥取の海辺にある浜村温泉の宿での一節がある。これは1891年の夏のことで、その年の1月に結婚したばかりのセツ夫人との新婚旅行だったらしい。熊本にやって来るわずか3ヶ月前のことである。
 この温泉宿での一夜、ハーンは夢を見る。お寺の中庭のようなところに顔見知りの出雲の女が現れてケルトの子供歌を歌うという不思議なシーンだ。原語で読んでいないので子守唄なのか童謡なのかわからないが、僕が思いつくのはただ一つ「アイリッシュ・ララバイ」という歌だ。「トゥー ラ ルー ラ ルー ラルトゥー ラ ルー ラ ライ・・・」というおなじみの歌詞で、数多の歌手に歌われた名曲。
 今日はパティ・ペイジの歌で聞いてみた。



 また、この浜村温泉は鳥取県民謡「貝殻節」の発祥の地。現在歌われているのは、昭和7年に新民謡ブームの中で改作されたものらしいが、元唄は江戸時代からこの辺りで唄われていたという。
 そして、この「貝殻節」が全国に知られるきっかけとなったのが80年代にNHKで放送されたドラマ「夢千代日記」である。ドラマの舞台は兵庫県側の架空の温泉場になっていたが、「貝殻節」を聞けば「夢千代日記」を思い出す。
 はたしてハーンはこの唄を聞く機会はあっただろうか。

芸者置屋はる屋の女将・夢千代(吉永小百合)、半玉の小夢(中村久美)、芸者の金魚(秋吉久美子)
そして三味線は年増芸者の菊奴(樹木希林)の面々。