陰暗き岩間の水と聞きしかばたづねても来しけふの暑さに(宗不旱)
若葉しててのひらほどの山の寺(夏目漱石)
若葉しててのひらほどの山の寺(夏目漱石)
これはいずれも成道寺についての詩歌。上は放浪の歌人と呼ばれた宗不旱(そうふかん、明治~昭和前期)の「成道寺」と題する一首。下は漱石が若葉の頃に成道寺を訪れて詠んだ一句。
成道寺は熊本市の西部、柿原の奥まった所にある山寺で590年の歴史を有する古刹。岩間から清水が湧き出で、緑に覆われた境内は往古より避暑地となっていた。そんな風情を歌ったのが上の二人の詩歌である。
熊本市内からほど近く、「かくれ里」とも呼べるような成道寺とその周辺の景観が、熊本西環状道路の開通により激変しつつある。はたして我々の次の世代までこの貴重な文化遺産は残せるだろうか。

成道寺の湧水が清流・成道寺川となって田畑を潤す

新緑が美しい古刹の初夏

キショウブが鮮やかなコントラストをなしているが、実はこれ要注意外来生物なんだそうな

緑のとばりに覆われたような成道寺本堂

そんな成道寺も目前にコンクリートの塊が迫り周辺の景観は激変