徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

♬ 筑後柳川 水の上

2017-05-19 23:41:49 | 音楽芸能






北原白秋「柳河風俗詩」より

水路
 ほうつほうつと螢が飛ぶ…………
 しとやかな柳河の水路を、
 定紋つけた古い提灯が、ぼんやりと、
 その舟の芝居もどりの家族を眠らす。

 ほうつほうつと螢が飛ぶ…………
 あるかない月の夜に鳴く蟲のこゑ、
 向ひあつた白壁の薄あかりに、
 何かしら燐のやうなおそれがむせぶ。

 ほうつほうつと螢が飛ぶ…………
 草のにほひする低い土橋を、
 いくつか棹をかがめて通りすぎ、
 ひそひそと話してる町の方へ。

 ほうつほうつと螢が飛ぶ…………
 とある家のひたひたと光る汲水場(クミツ)に
 ほんのり立つた女の素肌
 何を見てゐるのか、ふけた夜のこころに。