徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

「 とんとん鯰 」 と 大地震

2013-10-20 18:49:44 | 音楽芸能
 安政2年(1855)10月2日夜、江戸を「マグニチュード6.9」という大地震が襲った。家屋の全壊と焼失は一万四千戸以上、死者は七千人以上と伝えられる。江戸時代、地震は地下で大鯰が大暴れすることによって発生すると考えられていた。
 安政の大地震をきっかけに、大地震を起こしたという鯰や、それを押さえつける鹿島大明神など、鯰を題材とした多色摺りの「鯰絵」が発売され大ブームを呼んだ。鯰を擬人化し、社会を風刺した「鯰絵」は、大災害に遭いながらもそれを洒落のめす、江戸庶民の「諧謔(かいぎゃく)」趣味にあふれている。

▼鯰絵


 この「とんとん鯰」という曲は、鯰を題材に、舞台は熊本だが、粋で洒落た江戸情緒あふれる今藤珠美さんの快作。歌詞(佐藤幸一さん)の中には、大昔、阿蘇大神すなわち健磐龍命(たけいわたつのみこと)が阿蘇外輪山の数鹿流ヶ滝(すがるがたき)の辺りを蹴り崩して阿蘇湖をお干しになった時、湖の主であった大鯰が流れ出て、上益城郡嘉島の辺りで止まった。それ以来、この地を鯰村(なまずむら)と呼ぶようになった、という「肥後國志」にも出てくる民間伝承が織り込まれている。
 東日本大震災の前後から「中央構造線断層」という言葉をよく見たり聞いたりするようになったが、実は、大鯰を押さえつけるという鹿島大明神のある鹿島と阿蘇は、この「中央構造線」の真上に乗っかっているのである。大昔の人は経験的にそれを知っていていろんな民間伝承が生まれたのかもしれない。