虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

郡上一揆 (2000/日)

2005年04月28日 | 映画感想か行
監督: 神山征二郎
出演: 緒形直人 岩崎ひろみ 古田新太 前田吟 林隆三 加藤剛

 江戸時代の3大一揆の中でも、領主改易のみならず、幕府の要職までが処罰されたほかに例を見ない一揆を描く。

 これは、農民側の勝利に終わった一揆として有名です。それでもその「勝利」の内容は厳しいものです。
 当然ながら主だった農民たちは死罪。おまけに、農民たちが恐れた隠し田も露見し、険見も実行されてしまうわけですから。しかし、取り潰された領主の次のお殿様はやはり教訓を心得た人だったようなのですが、少なくともそれくらいのことがなくては死んだ人たちは浮かばれません。

 キャストも豪華で力の入った映画ですが、どうも新劇的ゲンコツ芝居の香りを感じてしまったりします。それに、網野善彦の本をどっさり読んだ後だと、こういうインテリで社会的な責任も自覚した農民のあり方というものがそう新しい発見でもないこともこの映画の感動をそいでいるかもしれないです。なんとなく、歴史理解に役立つ学習映画みたいに感じるのは、きっと私の個人的見解です。
 でもやはりちょっとわかりにくい。お殿様もなんだか馬鹿殿みたいなだけだし、上訴というのは死を覚悟してするものだから、そこまで覚悟するだけの環境がはじめが説明不足に思えるので、ストーリーが進むにつれて主役陣の若い面々がやたらと力が入った演技になるのに気持ちが付いていききれない。

 とは言いつつも、広く見られるといいなあ、と思う映画ではあります。
 私のような年寄りっ子の良いところは、ちょっと前の一般的共通知識を受け継がせてもらえたことで、佐倉宗吾、松木長操、磔庄佐衛門、文殊九助などをヒーローとして知ったこともお得なことでした。それに、彼ら義民たちの訴状が手習いの手本として伝わっていたことも聞かされました。
 一揆・上訴の首謀者は、いわば為政者・領主の面子の為に死ぬべき運命を受け入れる覚悟をして、実行に及ぶわけです。こういった日本のフォークヒーローたちはもっと記憶されてもいいんじゃないかと思うのです。