虫干し映画MEMO

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屋根 (1956/伊)

2005年04月20日 | 映画感想や行
IL TETTO
監督:ヴィットリオ・デ・シーカ
出演:ガブリエラ・パロッタ ジョルジュ・リストッツィ

 大戦後のイタリアで、何とか住むところを獲得しようとする若夫婦のお話。
 戦後の住宅難で結婚しても住むところが見つからず、義兄の家で同居していたナターレとルイザは、とうとういられなくなって飛び出すが家は見つからない。仮小屋でも屋根がつき、住んでしまえば居住権を主張でき罰金を払えば住むことが出来る。左官見習いのナターレは仲間と小屋を作り、見回りの警官が来るまでに何とか屋根を完成させようとする。

 BS2の昼にヴィットリオ・デ・シーカ監督特集。「ミラノの奇跡」(1951)とこの「屋根」を一度に見たのだが、共に初見。今までデ・シーカ監督の初期作品というと「自転車泥棒」 「靴磨き」みたいな、「わかる、わかるけど苦しい、希望が欲しい…」と感じるようなのばかり見ていたようだ。
 共にちょっとコミカルで、人間の自分しか見えてない困った側面はほかの作品と同じくしっかり描かれているけれど、ラストは想定の範囲内(流行り言葉を使ってみました)ではあるがほっとさせてくれる。「屋根」のデータを見に行ったallcinema ONLINEでこの映画の主演二人が素人だと知ってびっくり。うまいです。それだけ社会に横溢する切実感があったということと、監督が上手だったということでしょうか。「自転車泥棒」もそんな感じでしたが。

 日本の戦後の映画を見ても、壁や屋根にトタンを巻いただけみたいな凄まじい小屋が家になっていたけれど、この映画でも住むところを求める人たちが必死になって作る家のチャチさがたまらない。レンガを積んだだけなので、叩いただけであっという間にばらばら崩れる。それでもレンガ積み上げ、「平屋根は人間の住むところじゃない」と時間の無い時にも主張してしまう主人公がおかしく、切ない。
 主人公夫婦2人を家から追い出し、でもいざとなっては必死で助けてくれる義兄がやっぱり実力のある職人的なかっこよさがあり、じつに気持ちがわかって、好もしい。

「ミラノの奇跡」はファンタジーで、いかにも初歩みたいな特撮が微笑ましく楽しい。でも、ファンタジー映像は技術だけでなくてまず想像力ありき、を頷いてしまう映像。楽しくて、やっぱり切ない映画だった。

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