虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

ロスト・イン・ラ・マンチャ (2001/米・英)

2004年05月19日 | 映画感想ら行
LOST IN LA MANCHA
監督:キース・フルトン ルイス・ぺぺ
出演:テリー・ギリアム ジョニー・デップ 

夜、BSでアラン・ドロンの「ブーメランのように」をつい見てしまい、例によって落ち込んでしまった。
気分を変えようとして見たのがこれ。テリー・ギリアムの製作中の映画が如何にしてポシャッてしまったか、を描くというなんともいえないものだが、実に面白かったのだ。
素のジョニー・デップも素敵なのだが、百面相ともいうべきテリー・ギリアムの表情の変化くらい、見ていてその状況を物語るものはない。
自分の頭の中で練ってきたものが現実に映像化された時の子どものようなうれしそうな顔。
準備の不備がわかった時の胸のアラシを押さえ込んで冷静でいようとする時の表情。
とんでもない不測事態に呆然とした顔…
スタッフの困り顔、出演者たちの機嫌悪そう、疲れた表情も思わず笑いを誘われる。これは映画制作に携わる人にとっては、笑ってられない悪夢のようなものだろうが、なんかとってもおかしい。
この「メイキング出来なかった映像」が、一つのドン・キホーテ物語であるともいえるのだろう。自分の作り上げてきた世界が目の前で崩壊していくのだ。

ドン・キホーテが作りたいというのはすごくよくわかる。
だって、人間の理想に向かって突き進む崇高さと、滑稽さ・愚かさを一人が体現しちゃってるんだものねえ!
テリー・ギリアムならずとも、イメージ作家なら自分の思い通りの映像でやってみたい素材だよね。
それを17世紀の精神のままに、現代の視点も入れて映像にするなんて、それもサンチョ・パンサがジョニーでしょう。やっぱり見たかった。

やっぱり先立つものが問題なのね。…ほんとお金さえあれば…