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記憶の総天然色

2009-01-26 11:00:00 | マダムH
花巻市にある『るんびにい美術館』は、知的障害者の美術作品を展示する県内初の施設として平成19年にオープンした。
H嬢によると、現在開催中の企画展が面白いと言う。
 『木伏大助 ~記憶の総天然色~ 』
 
木伏さんは1969年生まれの40歳。
1950年から1960年代を中心としたB級映画のポスターを描き続けている画家。
驚くことにそのおびただしい数の作品のすべてが、幼い頃、近所の映画館の前で見かけた看板やポスターを、模写ではなく本人の記憶のみで再現して描かれていることだ。
美術館内は当然ながら撮影禁止。
でも作品を紹介したいという私の気持ちは揺るぎなく、会場に用意されていた美術雑誌からの撮影と、ネット上のよそ様の頁から拝借した写真を使用した。


 





 東映、大映、東宝、日活.....映画産業華やかなりし頃の記憶が甦り、見る者を元気にさせてくれる作品ばかりだが、ご本人はこれらの映画を1本も見たことはないという。
作者の興味・関心は、一途にポスターの造形を再現することに向かった。
木伏大助さんは、その体内のいずこかに高性能のバックアップ機能を備えているとしか言いようがない。
しかもデータは、いつ何時でも自由に取り出して復元できるという。
キャッチコピーや配役・スタッフの氏名、全体のレイアウトや字体、映倫番号にいたるまで正確に記憶しているのだ。
何年経ても決して色褪せることなく失われることもない記憶。
この神秘的な能力とひたむきな表現への姿勢に驚嘆するとともに、作品の持つ楽しさ、力強さ、懐かしさ、温かさに心引かれた。

 ところで知的障害者の美術作品を、ボーダレスアートとかアウトサイダーアートと呼ぶことを今回初めて知った。

 ボーダレスアートとは、障害のある人の表現活動を一般のアーティストの作品と並べて展示することで、「障害者と健常者」「アートと地域社会」など、様々なボーダー(境界)を超えていくという試みで運営されているらしい。
アウトサイダーアートとは、芸術の伝統的な訓練を受けていなくて、名声を目指すでもなく、既成の芸術の流派や傾向・モードに一切とらわれることなく自然に表現した作品のことをいうらしい。(by wiki)

私自身はインサイダー主婦からはみ出したくてうずうずしているところがあるので、アウトサイダーという言葉に対する抵抗は全くない。
しかし障害のある人の芸術活動をアウトサイダーと分類するのは、差別的な雰囲気を感じるし......何かちょっと違うのではないだろうかとふと疑問を持ったのだが

 いや木伏大助さん、その表現への切実な思いと強烈なエネルギー。
アートは、独立した作品として存在し評価されるべきだ。
まさに凄絶な魂で内に向かうアウトサイダーアーティストだと思う。



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6 コメント

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Unknown (京こまめ)
2009-01-26 19:51:34
私も知的障害者の美術展で生き生きとした、それもこの世のものと思えないほどの鮮明な色使いで描かれている作品の数々に驚いたことがありますが、この木伏大助さんはすごい記憶力なんですね。
子供の頃見たものひとつひとつが写真のようにファイルされていて、いつでも取り出せるなんて。人間ってどうなってるんでしょうね。こんなに覚え込めるスペースが本当にあるのですね。
「年をとると昔の事ははっきり覚えてるけどね・・」これとはまた違うんですよね。
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こまめさんへ (nihao)
2009-01-26 20:57:22
私も昔のことはよく覚えているのですが......それとは全然違うみたいですね。

木伏大助さんの突出した記憶力は、とても人間業とは思えません。すごいですね。
漢字も絵の一部とか記号として覚えているのかしら?
とにかく不思議というか神秘的。
そして最後は見る者すべてに癒しと感動を与えてくれるアートでした。

でも決して失うことのない記憶って.....どうでしょう?
忘れっぽいぐらいでちょうどよいのかも。

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Unknown (うらら)
2009-01-27 14:59:04
記憶だけでこれだけのポスターを描くのですね!
「写真のように記憶する」特殊能力を持つ人がいるのは聞いたことがありますが、こうして画像として見ると驚きです

自分の興味のある部分で記憶力が刺激されるのでしょうね。
覚えていたいことだけ覚えていられるのなら・・良いですね~。
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うららさんへ (nihao)
2009-01-27 19:44:34
ポスターを見ると、作者の精緻な記憶力に驚かされますよね。
山下清さんの絵も凄いと思ったけれど、木伏さんの絵は、写生でも模写でもないところが信じられません。
現在これらのポスターのほとんどは残っていないらしく、木伏さんの記憶の正確さを確かめることはできませんでしたが、きっと比べるまでもなく確かなのだと思います。

>覚えていたいことだけ覚えていられるのなら・・良いですね~。
本当にそうですね。
最近の私のバックアップ機能は、恥の記憶・怒りの記憶しか復元しなくて......イヤになる。
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Unknown (士別)
2009-01-28 07:12:10
凄い記憶力ですよね、ちょっと前に薬を飲んだのかさえ忘れ、オタオタしているのに。印象に残ったものは全部覚えているのでしょうね。
綺麗な色使いにも驚かされますよね。
知的障害、精神障害、身体障害、障害があるからと、くべつして作品を見るのは如何なものかと思いますが素晴らしいものは素晴らしい。
障害は難しいネ。
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士別さんへ (nihao)
2009-01-28 09:08:08
薬に関してはご同様。
私もいつも大いに悩んでいます。
ご飯を食べたのを忘れるのも、そう遠い日のことではありませんね。

障害者の表現活動を「アウトサイダーアート」と言うことに、私はちょっと引っかかってしまいました。
健常者を基準としている傲慢さを感じたのですが、木伏さんの作品を見ているうちにそうではないことに気がつきました。
これらの屈託のない力強い作品は......やっぱりアウトサイダーだなあと感動したんです。
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