最近、職場に手作りのお弁当を持参する弁当男子の話題をよく耳にする。
小遣いの節約や健康管理のためには望ましい現象だ。
自分の弁当を写真入りで紹介する弁当男子のブログもたくさんあるから、日本の男子もずいぶん変わったものだと驚く。
我が夫も今年から弁当男子となった。
母親や妻の手による弁当持参者も、男子弁当部の準会員扱いぐらいにはしてくれるらしい。
バス通勤なので手荷物は持ちたくない、でもカロリー過多になる外食は避けたいというので、小さめのおにぎり弁当にしているが自家製の梅干しが大活躍だ。
私は学校給食の恩恵を全く受けることなく小中学校時代を過ごした。
その頃既に児童・生徒の健全な発達と食生活の改善を目的とした学校給食法が制定され全国に広がっていたが、我が辺境の生地にまではなかなか浸透しなかった。
残念ながら脱脂粉乳を飲んだ経験もない。
当時はみんな貧しかったし、母親たちも生活に追われて多忙だった。
冷蔵庫がないから食品のストックもなく、毎日おざなりの弁当を持たされていたので、お昼の時間が待ち遠しくてたまらないということはあまりなかった。
児童たちはみな粗末な弁当の中味を見られたくない一心で、弁当の蓋で手元を隠して大急ぎで食べていたという哀しい記憶だけがやけに鮮明だ。
同じクラスにマサカツちゃんという乱暴で嫌われ者の男子がいて、席替えで隣同士になって我が身の不運を呪ったことがある。
マサカツちゃんの弁当は、いつも麦ご飯に醤油をかけただけでおかずが入っていることは決してなかった。
貧しい生活ぶりを窺うには余りある弁当で、子ども心に私の胸は痛んだ。
お昼になると元気がなくなるマサカツちゃん、彼もまた元祖弁当男子だった。
中学卒業後は離ればなれになったが、一度だけ青森駅のプラットホームでばったりと鉢合わせしたことがある。
※
※
※
夏休み帰省を終えて東京に戻る途中の私。
一目でそれと判る暴力団構成員風の二人の男と同伴の彼。
互いに時間が止まったかのように5・6秒じっと見つめ合った。
当時から彼の将来を予測してはいたが、見事に的中した衝撃と驚愕。
脳裏に醤油かけ弁当が鮮やかによみがえった。
何か言いたそうにしていたが、急に目をそらし背を向けて去った彼。
でも私はマサカツちゃんの声を確かに聞いた。
そして私の祈りも彼の胸に届いたはずだ.......
「毎日旨いモンが食えるようになったから心配するな!
おい、俺の分までしっかり勉強しろよ!」
「マ、マサカツちゃん!命を粗末にしては絶対にだめよ!」
(by nihao劇場・青春の門)
小遣いの節約や健康管理のためには望ましい現象だ。
自分の弁当を写真入りで紹介する弁当男子のブログもたくさんあるから、日本の男子もずいぶん変わったものだと驚く。
我が夫も今年から弁当男子となった。
母親や妻の手による弁当持参者も、男子弁当部の準会員扱いぐらいにはしてくれるらしい。
バス通勤なので手荷物は持ちたくない、でもカロリー過多になる外食は避けたいというので、小さめのおにぎり弁当にしているが自家製の梅干しが大活躍だ。
私は学校給食の恩恵を全く受けることなく小中学校時代を過ごした。
その頃既に児童・生徒の健全な発達と食生活の改善を目的とした学校給食法が制定され全国に広がっていたが、我が辺境の生地にまではなかなか浸透しなかった。
残念ながら脱脂粉乳を飲んだ経験もない。
当時はみんな貧しかったし、母親たちも生活に追われて多忙だった。
冷蔵庫がないから食品のストックもなく、毎日おざなりの弁当を持たされていたので、お昼の時間が待ち遠しくてたまらないということはあまりなかった。
児童たちはみな粗末な弁当の中味を見られたくない一心で、弁当の蓋で手元を隠して大急ぎで食べていたという哀しい記憶だけがやけに鮮明だ。
同じクラスにマサカツちゃんという乱暴で嫌われ者の男子がいて、席替えで隣同士になって我が身の不運を呪ったことがある。
マサカツちゃんの弁当は、いつも麦ご飯に醤油をかけただけでおかずが入っていることは決してなかった。
貧しい生活ぶりを窺うには余りある弁当で、子ども心に私の胸は痛んだ。
お昼になると元気がなくなるマサカツちゃん、彼もまた元祖弁当男子だった。
中学卒業後は離ればなれになったが、一度だけ青森駅のプラットホームでばったりと鉢合わせしたことがある。
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夏休み帰省を終えて東京に戻る途中の私。
一目でそれと判る暴力団構成員風の二人の男と同伴の彼。
互いに時間が止まったかのように5・6秒じっと見つめ合った。
当時から彼の将来を予測してはいたが、見事に的中した衝撃と驚愕。
脳裏に醤油かけ弁当が鮮やかによみがえった。
何か言いたそうにしていたが、急に目をそらし背を向けて去った彼。
でも私はマサカツちゃんの声を確かに聞いた。
そして私の祈りも彼の胸に届いたはずだ.......
「毎日旨いモンが食えるようになったから心配するな!
おい、俺の分までしっかり勉強しろよ!」
「マ、マサカツちゃん!命を粗末にしては絶対にだめよ!」
(by nihao劇場・青春の門)
泣きそうになりました。
内容も勿論ですが、いつもながら文章も素晴らしく、何度も読み返しました。
これはもうプロの文筆家のものだと思います。
そういう時代でもあったのですね。
まあ、ありがとうございます。
闘魂さんを真面目にさせたなんて嬉しいです。
泣かせる意図で書いたというよりは、笑わせるつもりで書いたので意外でした。
そこでもう一度読み返してみたら、私も悲しくなってしまいました。
人が育つのには環境が重要ですが、あの頃はまだまだ混乱期で、生活していくのがやっとという時代でした。
マサカツ君ももう少し遅く生まれていたら、別の人生があったかもしれません。
弁当男子という言葉を耳にするたび「醤油かけご飯」を思い出してなりません。
乱暴者で嫌われ者のマサカツちゃんだけど毎日、おかずのない醤油かけ麦飯を食べていることに胸を痛めていたnihaoさん・・・麦飯に醤油をかけただけの、おかずのない弁当を毎日持たされた子供が、当たり前にいたという時代背景だったのですね。そして成長したマサカツちゃんは、想像どおりに任侠道を歩いていたというのもなにか悲しい気がします
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マサカツ君には中学時代、密かに憧れていた彼女がいました。当時、皆から乱暴者扱いされていた彼だけに、結局、その思いを打ち明けることはなかったのです。でも、一度だけ偶然に、席替えで憧れの彼女と席を並べて、隣同士になれたことがありました。ただそれだけのことだったのですが、それは彼にとっては、唯一の大切な青春時代の淡い思い出だったのです。そして、長い年月が流れて、ある日、彼は偶然にも青森駅で彼女との再開を果たすのです。懐かしさと、嬉しさが入り混じり、何か言おうと思ったのですが、胸がいっぱいになってしまい、言葉にならず、何も言えないまま、すれ違ってしまいましたが、それで充分でした。マサカツ君は、それを言葉にすると、大切な思い出が壊れてしまいそうで怖かったのです
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まさかマサカツ君にそんな気持ちがあったとは思えませんが......
大笑いしながら楽しませていただきました。
マサカツ君はとにかくワルで、私にヘンな未知の言葉を吹きこんでは
「分からなかったらカアチャンに聞いてみろ!」
とニヤニヤ顔、正直に母に訊ねて怒られたことが何度もあります。
そんなワルの醤油かけ弁当、おそらく私にとっては、世の中のひずみを意識した初めての経験だったかもしれません。
あの頃のことを思うと隔世の感があります。
まるで、小説のような物語に酔いしれました。
そして、風の又三郎さんの、続編(?)に、
おお!そうだったのかもしれない。。。と、
胸がキュンとなるのでした。
って、私としては笑いの方を狙っていたので、どこで計算ミスが生じてしまったのかと悩んでしまいました(笑)
又三郎さんの続編にいたっては、もう爆笑なのですが.......
マサカツちゃんの真似をして、家で醤油かけご飯にして食べてみたことがあるのですが、想像以上に切ない味わいでした。
学校給食がもっと早くスタートしていれば、マサカツちゃんも任侠道に走ることはなかったかもしれないのに.......
いかに麦を入れないように弁当箱に詰めるか。
いくつの頃だったろうネ、魚肉ソーセージが出始めたのは。あれが入っているだけでご馳走だったよね。その横にはきんぴらごぼうだった。
飽食の時代になって、当たり前のように何でも食べているって不思議な事ですよね。
時々フードファイターとか言って、粗末に食事をしている姿をテレビで見ると、胸が苦しくなるのは、ひょっとしてその時代に育ったからかなー。「食べるに忙しい」と言っていた母の働く姿が思い出されます。マサカツちゃん元気してるといいね。
マサカツちゃんもきっと命を大切にされてると思います。
ムショの中のご飯は麦飯なのでそんな切ない思い出を持つマサカツちゃんはきっと食べたくないでしょうから。
小説や映画のワンシーンの様に沁み入りました。少し前の日本ってこんな感じだったんですよね~。
*****ところで、醤油かけご飯、カツヲ節をトッピングして食べるの、好きです。
高血圧気味の夫に、仕方なくお弁当を作って持たせています。
で、活躍しているのが自家製梅漬け。
毎年10キロ前後の梅を漬けますが、翌年まで残った試しがありません。
どうしてそんなに使うの!というnihaoさんの声が聞こえそうですが、
子供たちにも評判がよく、毎年娘には送り、息子には来た時に持たせます。
時には友人の元へも。
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燃える闘魂さんも言われてますが、nihaoさんの文章力は本当に素晴らしい!
文章力もさることながら構成の仕方が秀逸なのですね。
ただ、時々nihaoさんの狙いから外れてしまうのは何故でしょうか?
笑いを狙ったという今回の記事ですが、私も切なくなりました・・・